第8話
「いやぁー、夕食まで作ってもらってすみません」
「良いの!良いの!気にしないで!」
僕は本当に広かったマキナの家のリビングで腰を下ろし、マキナの調理が終わるのを待つ。
本来、この世界において食事などと言った行為は必要ない。しかし、魔物の肉を食べると素のステータスが上昇するため、戦闘をする職業についている人たちの多くは魔物の肉を食べている。
あと、娯楽のために食事をしている人たちも居る。
不遇な扱いを受けて育ってきたと言っても一応僕は第三皇子なので、赤ちゃんの頃から魔物の肉は食べてきている。
「はい!完成!魔物肉のステーキ!」
僕の前にボーリュームたっぷりのステーキ肉が置かれ、マキナの自分の前にステーキ肉を置く。
「そういえば、なんでアルはここに来たの……?来ている服とかも普通に良さげな奴だよね……?」
マキナが座ると同時に、口を開いて尋ねてくる。
「えっと……」
僕の着ている服。
それは超大国であるアルビナ帝国の第三皇子が着ている服だとして考えるとかなり見窄らしいものであるが、平民視点で見るとものすごく高価な服となる。
マキナから見えばこんな身なりの良い人間がいきなり冒険者になろうとしているのだから疑問だよね。
「んー。まぁ、簡潔に言うと自由に生きたかったから、かな」
僕はマキナの疑問に対して、本当に表面的な理由だけを話す。
『神より宿し天命』を持たずして生まれた神に逆らいし者たる能無。
生まれながらに押された烙印。
別に僕は『神より宿し天命』を持っているにも関わらず押されたその烙印は僕に決して楽でない生活を強い……そして、僕に自由の道を作り出した。
生まれたばかりの頃は上手く使えなかった『神より宿し天命』も、5歳頃になるとバリバリ使えるようになったのだが、それを敢えて明かさずに秘匿。
能無として生きて、今日の朝のように国家から追放されるように動いたのだ。
普通に考えてどこにでも居る一般人でしかなかった僕が皇族なんてしがらみに囚われ、陰謀渦巻く宮殿の中を生きるとか無理だよね。
こっちの街に来たのにはもうひとつ理由があるのだけど……これに関して言えば誰にも言うつもりはない。
「自由!うんうん。実にいい響きだよね!自由に生きて、世界を見て回る!最高だよね!」
「間違いないね。しがらみとか邪魔でしか無いね」
僕は小さな声でいただきますと告げてから目の前にある魔物肉のステーキを口へと頬張る。
口の中で熱い肉汁が溢れ、そして、お肉が舌の上で柔らかくとろけていく。
魔物の肉はびっくりするくらい美味しいのである。
「自由な冒険者は最高ってことだよね!」
「うん。そういうこと」
僕はマキナの言葉に頷いた。
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