第6話

「ここがダンジョンねぇ」

 

 僕は小さな…小さな扉の前に立つ。

 普通の一軒家の玄関にしか見えないようなこの扉がダンジョンへの入り口なのである。

 僕は冒険者登録を終わってからすぐにこっちへと来たため、既に空は少し赤みがかっている。

 こんな時間にダンジョンへと入るのは僕くらいなもので、扉の近くに人の姿はない。


「入るかぁ」

 

 僕は扉を開いてダンジョンの中へと入る。

 中は草原のような場所で、少し離れたところに緑色の肌を持った人型の魔物、ゴブリンが見える。


「良し、と……とりあえず三時間くらいダンジョン探索と行きましょうか」 


 僕は大地を蹴り、下へと降りていく階段を探すため地面を蹴って移動を開始した。

 ダンジョンは下へ下へとと降りていく形の場所であり、階層の空間は各層ごとに違っている。

 

 ■■■■■

 

 禍々しい赤き月が天上に輝く紫色に染まった空の下、廃墟と化した城を駆け抜ける。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 そんな僕を追いかけているのは


「遅い」

 

 僕は壁を蹴って跳躍。

 自分を追いかけてきた牛頭の巨人とすれ違う。


「……ァ」

 

 すれ違いざまに振るった僕の一太刀が牛頭を地面へと落とし、巨人はゆっくりとその巨体を地面へと倒す。

 

 ビービービー

 

 牛頭の巨人が絶命したその瞬間、廃墟の中に不快で耳障りな音が響き渡す。


「ちっ。ここでもセンサーが反応するのかよ」

 

 舌打ちを一つしてから僕はその場を跳躍し、この場から立ち去ろうとする。

 だがしかし、そうは問屋が降ろさない。

 僕がさっきまで立っていた場所にいつの間に現れていた複雑怪奇な魔法陣のようなものから鎖が伸び、僕の足を掴んでいた。


「クソッ!この世界には魔法なんてないだろうがッ」

 

 魔法陣からゆっくりと出てくるただただ真っ黒な人影。黒い人影は真っ白な服を身にまとい、その体から幾本もの鎖が伸びている。


「めんどくさいッ!」

 

 僕は天魔之暗明刀を振るって鎖を断ち切り、現れた黒い人影へと斬りかかる。

 

 キンッ! 

 

 僕の刀剣と黒い人影の周りを渦巻いている鎖がぶつかり、火花を散らす。


「『神より宿す天命:弐式:時神魔銃創天』」

 

 僕は己が持っているもう一つの『神より宿す天命』を取り出す。

 左腕に現れる華美な装飾が施された白い銃の銃口を黒い影へと向け、引き金を引く。

 この世界では絶対に聞くことのない銃声が響いた後、黒い人影はこの世界から消えていく。

 だが、既に僕の周りには幾つもの魔法陣が出現している。

 そして、ここから大量の黒い人影が姿を表す。


「ふー」

 

 僕は息を深く吐き、右手に握られている刀剣と左腕に握られている銃口を構える。

 

 ここはダンジョン567層。

 何故かそこに徘徊している魔物を殺すと、魔法陣が現れてワラワラと敵が集まってくる厄介な階層だった。

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