第5話

 冒険者ギルドの中。

 多くの依頼が掲示されている掲示板に、複数人の受付嬢が立っている受付、簡易的な酒場、多くの机と椅子。

 

「おい!酒だッ!酒!酒をもってこい!ガッハッハッハッハッ!」


「おーい!誰か!俺らと共に依頼を受けてくれる奴らは居ねぇか!」


「あぁ……クソ……なんでこんなことに……」

 

 冒険者ギルドの中は多くの冒険者に溢れ、喧騒にこの場を支配されていた……のだったが。


「良し!行くよ!」


 冒険者ギルドの中にマキナが入っただけでその喧騒はあっと言う間に無くなってしまう。

 

「……お、おい」


「嘘だろ……」

 

 それだけでなく冒険者たちはマキナの隣に立っている僕をあり得ないものを見るかのような視線を向けてくる。

 あり得ないものを見るかのような視線を向けてくるのは何も冒険者たちだけじゃない。受付嬢さんたちも同様だった。


「ちょっと良いですか!」

 

 マキナは受付嬢さんへと元気よく話しかける。


「え、あっ。はい。大丈夫です。何の御用でしょうか?」


「えっとね」


「自分が冒険者登録を行いたいのですが、可能でしょうか?」

 

「ぼ、冒険者登録ですね。了承しました」 

 

 冒険者登録において何か試験などやらなくてはいけないことはない。誰でも簡単にすぐなれるのである。

 ……それにしても、何故か受付嬢さんはものすごくゆっくり丁寧に作業を進めている。帝国の冒険者ギルドはここまで丁寧ではなかった。

 やっぱり冒険者最大の国家はここらへんも丁寧なのかな?


「あぁッ!!!ごめんなさい!!」

 

 作業を進めていた受付嬢さんの隣で作業をしていた受付嬢さんが手を滑らしてペンを飛ばしてしまう。


「へ?」


 受付嬢さんの手から離れて後ろへと飛んでいったペンはそのまま壁へとぶつかって跳ね返り、僕の少し後ろでぬぼーっとしていたマキナに向かって飛んでいく。


「ふむ」

 

 僕は軽く腕を振るって飛んできたペンを掴む。


「はい。どうぞ。お返しします」

 

 そして、掴んだ二本のペンを受付嬢へと返却する。


「あ、ありがとうございます……」


「それで?冒険者登録の方は……」


「あぁ!はい!大丈夫です。冒険者登録は完了致しました。説明は必要でしょうか?」


「いえ、必要ありません」


「了解いたしました。それでは、一年間何の問題もなく過ごし、正式に我々の仲間となることを願っております」

 

 冒険者登録してから一年間の間は監査期間となり、その間に何か問題起こした場合はすぐに冒険者登録を解除され、その問題の責任を冒険者ギルドが負わないということになっているのである。

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