第3話

 三匹ほどいる犬型の魔物と、剣を失って地面にへたり込んでしまっている少女。


「いや……いや……いやぁ!誰か、誰か助けて」


「うん。任せて」

 

 木の枝を蹴って移動していた僕は木より降り立つ。


「ふぇ?」

 

 当然現れた僕に驚いている少女のことは無視し、視線を魔物の方へと移す。

 

「……」

 

 そこそこ強い魔物ではあるけど、僕の敵ではないかな。

 二本ある刀剣のうち、短い方を手にとって僕は魔物の方へと歩を進める。


「ぐるぁッ!」

 

 僕が魔物の間合いに入った瞬間に魔物は僕の方へと飛びかかってくる。

 そして、一匹が飛び込んでくれば他の二匹も。

 全員が僕の方へと飛びついてくる。


「遅いな」

 

 僕は一度その場を跳躍。

 魔物の飛びつきを回避し、己の手に握られている刀剣を数度振るう。


 『神より宿す天命』は所有者の素のステータスも上昇させ、その上昇数は元の上昇数値とどれほど『神より宿す天命』で魔物を殺したかよって決まる。

 僕の増加量はかなり高く、この程度の魔物たちでは僕のステータスについてこれない。

 

 魔物たちは僕の振るった刀剣を認識することすら出来ずに絶命していく。


「大丈夫ですか?」

 

 僕は魔物を一網打尽にした後、地面へとへたり込んでいた女性……いや、見た目だけで判断するのであれば少女の方が適切だと思われる女の人の方へと視線を向ける。

 ビキニアーマーを身にまとい、赤い瞳と赤い髪を持ったポニーテールの少女。


「え……あ、はい」

 

 少女は僕の言葉を聞いて頷く。


「そう……それなら良かった。立てるかな?別の魔物が来てしまう可能性があるから出来るだけ早くここから離れたいのだけど」


「す、すみません……ちょっと腰が抜けてしまっていて……そ、その……」


「なるほど。じゃあ、ちょっと失礼しますね」

 

 僕は地面に倒れている少女をお姫様抱っこで抱きかかえる。


「ピッ!」


「いきなり抱きかかえてしまって申し訳ございません。ですが。緊急時故、お許しください」


「は、はい!だ、だ、だ、大丈夫です!!!」


「それなら良、かった……」

 

 ……。

 …………。

 少女のことをお姫様抱っこして気づく。下半身が湿っていると……それだけでない。

 少女からほのかなアンモニア臭も漂っているということに。


「はぅわ!?」

 

 少女も自分が漏らしてしまっている事実に気づいたのだろう。

 彼女はこれ以上ないまでに頬を赤く染め、沈黙していた。

 

「……では、行きますね」

 

 僕は少女が漏らしていることに気づかなかったふりをして何事もなかったかのように進む。

 後で湿っている自分の手舐めよ。なにこれ。ご褒美なんですけど。

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