第2話

 神によって見守られし世界、インキュナビュラ。

 食事などの必要性が一切なく、他生命を殺傷する必要のない平和な世界。

 そんな平和な世界で唯一殺傷を好む存在……それが魔物と呼ばれる凶悪な生物である。

 神に選ばれた種族である人類は世界の癌である魔物を殺すため、神より授けられた力である『神より宿す天命』を使い、日夜魔物と戦い続けるのだった。

 

 ■■■■■

 

 アルビナ帝国東部に位置する巨大な森林。

 魔物が多く生息し、一般人が入ればたちまち魔物に食い殺される森林の中を僕は走る。

 僕の目的地は唯一つ。

 この森林を抜けた先にあるリューエス王国に行きたいからである。


「ふわぁ……」

 

 僕は寝不足で眠たい体を動かして走る。


「ぎゅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!!」

 

 ものすごい声を上げて後ろから追いかけてくる魔物は無視である。

 今、魔物と遊んであげるつもりもない。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 僕が魔物と追いかけっこしながら、森林を走っていると、女の子の叫び語が聞こえてくる。


「ふむ」

 

 僕は既に結構な距離を進んでいる。

 走っている時間から考えると、結構リューエス王国の近くにまで来ていると思う。 

 なると、だ。

 今、悲鳴をあげている少女はリューエス王国に住んでいる人間である可能性が高いだろう。

 その子を助けたら、リューエス王国の道案内してもらえるかも。 


「『神より宿し天命:弐式:天魔之暗明刀』」

 

 僕は二本の刀を召喚する。

 弐式。

 それは忠義を誓ってくれている騎士を見送った後に襲ってきた魔物を殺したときに使った壱式とは桁外れの強さを持った武装である。

 『神より与えられし天命』には壱式と弐式の二つの形態があるのである。


「ほい」

 

 僕は右足をつけると同時に回転し、二本ある刀のうち、大きい方の刀を手にとって一振り。

 膨大なエネルギーを秘めている僕の刀剣による一振りはただの風圧であっても絶大な威力を発揮する。


 真っ赤な液体が辺りに広がり、雨となってこの場に降り注ぐ。


 僕は刀剣から手から離す。僕の手から離れた刀剣は背後へと一瞬でその姿を移動させる。

 ずっと僕の後ろを追いかけてきた大量の魔物を一網打尽にしてやったのである。

 助けに行くのに大量の魔物を連れていくとかエゲツない仕打ちだからね。


「よし、と。それじゃあ助けに行くとしますか」

 

 僕は悲鳴が聞こえてきた方向へと足を向け、そちらの方へと向かっていった。

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