第1話
手枷をつけられ、乱雑に揺れる馬車の中へと押し込まれた僕は酔って吐きそうになるのを必死に我慢しながら馬車に揺られていた。
僕はアルビナ帝国の第三皇子。
普通であれば僕がこんな扱いを受けるなんてありえないことだろう。こんな扱いを受けた皇族は帝国の長い歴史を見ても僕が初めてであろう。
そもそも追放される皇族なんて僕が初めてだからね。
「着いたぞ」
馬車が止まり、僕は馬車の外へと追い出される。
僕の前に広がっているのは大きな木々や様々な植物が生え茂っている森だった。
「ご苦労」
僕は自分をここまで運んできてくれた騎士に労いの言葉をかける。
「ァ?てめぇッ!何上から物申していやがるッ!舐めるんじゃねぇぞ!何も出来ない愚鈍!追放されたゴミがッ!良いか!お前はここで死ぬんだよッ!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」
僕の言葉に対して反感を抱いた騎士の一人が僕を睨みつけ、心底楽しそうに
「良いぞ。好きにやれ」
僕は騎士である男の罵倒を聞き流しながら口を開く。
「ハッ」
僕をここまで運んできてくれたうちの一人がもうひとりの首を跳ねる。
「うむ。ご苦労」
僕はそれを見て眉一つ動かさずに頷く。
一応僕は帝国の第三皇子。
自分の派閥くらい作っている……父親である皇帝を含め、帝国に僕の派閥があることなんて誰も知らないだろうけど。
まぁ、それも当然だろう。
なんて言ったて不遇な扱いを受け続けていた少年が己の派閥を作る能力があるなど思わないだろう……しかし、僕は別の世界である地球の日本で生きた、ちょっと色々あってで死んでしまった佐藤和哉の記憶を持っている。
転生した少年なのだ。自分の派閥を作るくらいの能力はある。
「さて、と。これから僕は他国で遊んでくるよ。君たちは帝国で頑張ってね」
「承知致しました」
僕は三人から一人になった馬車を引いて帝国へと戻っていく己に忠誠を誓っている騎士を見送る。
「さて、と。……うーん。ハァー」
己の忠実なる部下を見送った僕は長い馬車での旅の中で凝り固まった体を伸ばし、息を大きく吐く。
「『神より宿し天命:壱式:双刀』」
僕は使えない……ということになっている『神より宿し天命』を発動する。
それにより、僕の背後に二本の刀剣が出現する。
「ほいさ」
これ、明らかに質量保存の法則から逸脱しているよな?なんてことを考えながら背後に浮いている刀剣を一般掴んで一振り。
僕へと襲いかかってきた犬の魔物を切り捨てる。
「行くかぁー」
僕は人々の命を狙う魔物が多く住まう森の中を進んでいくのだった。
「アルミスッ!アルミスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううう!!!」
遠くから聞こえてきてくる僕の名を呼ぶ自分の婚約者の声は無視して、僕は森の中を進んでいく。
なんで今、あいつがこんなところにまで来て僕の名前を呼んでいるんだ?まるで理解出来ないんだけど……。
まぁ、良いや。
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