帝国から能無として追放された転生放蕩第三皇子である僕は、ずっと隠してきた己の力を使い、他国で最強の冒険者として成り上がる!

リヒト

第一章 帝国追放

プロローグ

 豪華絢爛、絢爛豪華。

 世界の超大国として君臨しているアルビナ帝国の玉座の間。

 どこの国家よりも巨大で、どこの国家よりも綺羅びやかで。

 どこの国家よりも精強な騎士団、どこの国家よりも多い貴族のいる玉座の間。

 そして、玉座に威風堂々と座る老齢のこの世界で最も偉大なる皇帝の前に一人の見窄らしい少年が跪かされていた。

 

 本来この世に並ぶ者ないほどに丁寧に育てられるはずの帝国の皇族である少年……アルビナ帝国の第三皇子である少年はまるで犯罪者のようにその手に手枷をつけられていた。


「余は。余の血を引く子たる汝を信じていた。しかし、その信頼はすべて裏切られた」

 

 偉大なる皇帝は目の前に跪く第三皇子へと親が子に向けるべきでない視線を遠慮なく浴びせ、口を開く。


「神に反し、『神より宿す天命』を持たず、何も努力せず、今日まで生きていた。余の帝国に無知蒙昧で何の努力もせぬ存在は要らぬ。皇族であればなおのこと」

 

 偉大なる皇帝は一度、言葉を切ってから……再度口を開く。


「汝を余の帝国より追放する。余の手足よ。それをさっさと運ぶが良い」

 

 偉大なる帝国の判断。言葉。

 それを受け、この場に集まっていた貴族たちが歓声を上げ、皇帝を称える声が響き渡る。


「行くぞ」

 

 第三皇子の側に控える二人の騎士のうちの一人が第三皇子の耳元でボソリと呟き、無理やり立たせる。

 そして、二人の騎士は第三皇子を無理やり歩かせて連行する。


「……」

  

 第三皇子は何も言わずに無言でそのまま連れて行かれる。


「ふっ」

 

 この場にいる誰も気づけ無い。

 玉座の間から出る直前に第三皇子が小さな笑みを浮かべたことを。

 

「「「皇帝陛下万歳!」」」


「「「皇帝陛下万歳!」」」


「「「皇帝陛下万歳!」」」


「「「皇帝陛下万歳!」」」


「「「皇帝陛下万歳!」」」

 

 玉座の間では貴族たちの皇帝を称える貴族たちの声が響き渡り続けている。

 皇帝は一人。

 この場から消えた第三皇子が先程まで跪かされていた場所をじっと見つめ続けていた。

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