第9話 高校一年の夏①

(高校一年の夏。夕暮れの教室にて)


「あら、三竹くんよね。こんな時間まで残って何をしているのかしら?」


「…………」


「無視とは、いい度胸ね」


「……………………」


三竹星みたけせい!」


「…………ごめん。寝てた」


「あなたは窓際に立ったまま、寝れるのかしら」


「風が心地良くて、涼しかったから」


「まさか、ほんとに寝てたのかしら。そんなところで寝てたら落ちるわよ」


「心配してくれたの?やさしいね」


「えぇ、なクラスメイトだもの(嫌味を含んだ笑み)」


「あなたは僕と同じクラスの人?」


「………」


「どうしたの?」


「………………………信じられない」


「あ、ごめん。僕人の顔と名前覚えるの苦手なんだ」


「いくら苦手でも、もう1年の後期なのよ。私は一応あなたと毎日顔を合わせて、挨拶もしてるのだけれど」


「………………そうだっけ?」


「……………………………………ほんとありえないわ」


「改めて自己紹介するわ。私は加藤志織かとうしおり、名前くらい聞いたことあるわよね?」


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