第十一章、ミヅキの視点

バリバリと、お湯が使えないためそのままの状態でカップラーメンかじっていく。

「午前10時になりました。現在の死亡者数を発表します。現在の死亡者数は3名です。繰り返します、現在の──。」

「……しぶといな。」

私がエレナさんたちを殺して四日が過ぎた。

最後の一人、エレナのお兄さんが餓死するのを待っているのだが、死亡者数が3のまま変動しない。

「森を燃やすべきだった……。」

エレナのお兄さんが野草を採っていることは知っていた。森に火を放ち植物を燃やしてしまえば食料の供給を断てたかもしれない……詰めが甘かった。

「大丈夫……あと少しの辛抱だもの……。」

最後の一人は水でない方法で死ぬことになるが、それでも私はルールを守って3人も人を殺したのだ。私が残れば必ず家に帰れるはずだ。

そうすれば、またお母さんに会える。今度は家の手伝いだってするし、ワガママも言わない。

あと少し……あと少しでお母さんに会える!

それだけを希望にこの地獄の生活にも耐えてきた。

待っててねお母さ──。

ガシャァン、と私の希望を打ち砕くかのようにけたたましい音が部屋中に響いた。

慌てて窓の方を見ると、すでに窓ガラスは割られており、エレナのお兄さんが私の部屋へ侵入している最中だった。

──ついに来たか。

急いで逃げなくては、この館にはいたる所にカメラが設置されている。こんな強引な方法が許されるはずがない。すぐに誰かが駆けつけて私を助けてくれるはずだ。

鍵を開け、廊下に出ようとした私は、目の前の光景に息を呑んだ。

──大量の家具が私の部屋の前に積まれていたのだ。

確実に殺すため、バリケードを設置したのだろう。

逃げられないのなら、何か反撃しなくては……そう考え振り向こうとした瞬間、ガツンと頭に強い衝撃を受けた。

「──ッ!」

頭をハンマーで殴られたのだろうか?視界がボヤけ私はその場に倒れてしまった。

その後も執拗に私をハンマーで殴ってくる。

遠のく意識の中で私が感じた感情、それは理不尽だった。

私はルールを守って人を殺した、それなのにこいつは水とは関係のない物で私を殺そうとしている。

今までの私の努力は何だったのか?

怒りが込み上げ、一矢報いようと体制を起こした、その時だった。

──エレナのお兄さんはハンマーを持っていた。

だが、ハンマーの柄の先についていたものは鉄の塊ではなく、氷の塊だった。

「……ぁぁ。」

ガツン、ガツンと頭ばかりを何度も殴られる。

遠のく意識の中で微かに母親のことを思い出した。

「……お母……さん……。」

3人も人を殺し、相手の食料も武器である水も奪った。勝利目前だった館での生活はここで幕を閉じた。

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