第六章、お別れ
「ん……。」
目を覚ますと辺りはすでに暗くなっていた。
どうやら俺は寝てしまったらしい。
──ツーとスピーカーに電源を入れたときの音が聞こえてくる。いつもの定期連絡だろう。
「皆さんこんばんわ、午後10時になりました。」
こんな時間まで寝ていたのか、館に来てからというもの生活のリズムは完全に狂っていた。
ぐぎゅるる……ここ最近森でとってきた野草ばかりを食べていたからだろうか、俺の腹から大きな悲鳴が聞こえてきた。流石に限界が来たのかもしれない。
エレナに感謝をしつつ、貰ったカップラーメンを一つ手に取り、台所へ向かおうとしたときだった。
「現在の死亡者数を発表します、現在の死亡者数は──」
「3名です。」
──ん?
「繰り返します、現在の死亡者数は3名です。それでは皆さん、ごゆっくりお休みください。」
どうやら俺の聞き間違えではないようだ。
同じ内容から一転、今の放送では死亡者数が3名だと言っていた。
今までかいたことのない、冷たい汗が背筋を伝う。そして俺の脳裏に嫌な予感がよぎった。
──エレナ。
手に持っていたカップラーメンを投げ捨てると、俺はエレナの部屋へ向かって走った。
「──ッ!」
廊下に人が倒れている、まさか死んでいるのか?不気味な感情がドバドバと溢れ出し脳内を埋め尽くしていく。
そして俺が最も恐れていた光景が目の前にあった。
「エレナ……エレナ!」
エレナが倒れていた。抱え起こすとひどく汗をかいており、髪の毛が顔にまとわりついていた。
「エレナ返事しろ、何があったんだ?」
エレナは小柄な女の子だったが、信じられないくらい重たく感じた。人ではなく無機質な物体を持ち上げているようだった。
──ブロロロと外からエンジンの音が聞こえてくる。
俺は藁にもすがる思いで玄関へ向かうと、そこにはあの男が立っていた。
「やぁ久しぶりだね。」
俺たちを館に連れてきた男だ。
俺はこの男に対しても少なからず恨みはあるのだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「エレナが……エレナが倒れているんだ。今ならまだ助かるかもしれない、助けてくれよ!」
床に膝をつき男に懇願したが、男はアッサリとこういった。
「残念だが、それはできない相談だ。君の妹は水槽の水を使って殺されている。ルールを守って殺されたのなら助けることはできないな。」
「……え?」
──水槽の水で殺された?
次々と押し寄せる情報で俺の脳内はパンクしそうになっていた。
「始めてくれ。」
男が一声かけると、ゾロゾロと館の中へ人が入っていく。
入口に近かった男の子の遺体に加えて、エレナの遺体も回収されていった。
「待て!待ってくれ!エレナ、エレナ!」
俺は数人の大人に抑えられ、エレナの遺体が運ばれていく様を見ていることしかできなかった。
エレナを必ず助ける、俺の思いは無惨にも打ち砕かれてしまった。
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