第五章、エレナの視点

「兄さんと一緒に食べたかったな……。」

独り言をつぶやきながら、私はカップラーメンの容器にお湯を注いでいく。

恐らくだが兄さんは、私の食料に手を付けていないのだろう。夜中にこっそりと館を出ては森の中に入っていく姿を何度も見かけた。

私の食料もそれほど多く残っているわけではない、兄さんを手伝って野草を集めたほうが良いのだろうか。

そんなことを考えながら、私は一人でご飯を食べていた。ミヅキも最近部屋に籠りがちで出てこない、他にも二人とも廊下ですれ違うくらいでほとんど会話がなかった。

──私にとって兄さんだけが頼りだった。

引け目を感じて野草を採りに行くのなら、どうして私も誘ってくれなかったのだろうか……。

モヤモヤとした気持ちのまま、インスタント食品を食べ終わると無駄にならないよう汁の一滴まで全て飲み干した。

食事を済ませ、歯でも磨こうかと思ったときにふと違和感に気づく。

──お腹が痛い。

最近インスタント食品ばかりを食べていたため栄養が偏っていたのだろうか?

しばらくすれば収まるだろう、そう考え部屋に戻りベットの上で横になったのだが一向に収まる気配がない。

しばらくすると、額からは玉のような汗が吹き出し、強烈な吐き気にも襲われた。私はたまらずトイレへ走った。

廊下に出た私は、そこで初めて体調が悪いのが自分だけでないことに気づく。

人が倒れているのだ。

私たちが館に来たとき紹介された、男の子のうちの一人だ。

私が通り過ぎてもピクリとも動かない、声をかけてあげたいが今の私にそんな余裕はない。

「……っ。」

結局我慢しきれず廊下にビチャビチャと胃の中のものをぶちまけてしまった。

次第に手足が痺れて動かしにくくなる、この館には薬がない。私にはどうすることもできなかった。

「兄さん……。」

遠のく意識の中で、何故こうなったのか、兄さんは無事なのか、そんなことがぐるぐると頭の中で渦巻いていた。







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