第一章、 妹のエレナ

窓から射し込んだ日が顔に当たり、俺は目を覚ました。

俺たちが館に連れてこられて一夜が明けた、窓から外をみると葉についた朝露に太陽の光が反射して美しい景色を醸し出していた。

──あぁ、こんな状況でなければ、この景色を楽しめただろうな……。

そんなことを考えながら俺は、昨日男に言われたことを思い出した。

──部屋の水槽内の水を使ってのみ、人を殺しても良い事とする。

突然こんなことを言われても、俺にはどうして良いのかさっぱり分からなかった。

「父さん、母さん……。」

俺たち兄妹はそれほど両親と仲がいいわけではなかった、それでもこんな状況になれば親を頼りたくなるものだ。

気づくと俺の頬にツーっと涙が流れている、あまりに理不尽な出来事で俺の心の中はぐちゃぐちゃになっていた。

大量の涙が溢れ出しそうになった、そのときだった──。

コンコン、と部屋のドアをノックする音が聴こえた。

「兄さん、居ますか?」

──エレナだ。

エレナは俺の妹で、昔から兄である俺のことを慕ってくれている、自慢の妹だ。

エレナに情けない姿は見せられない、そう思いググいと涙を拭うと、俺は部屋のドアを開けた。

ドアの前にはエレナが立っていた、肌は白く、髪の長さは肩にかかるくらいで、ふんわりとウェーブがかかっていた。

「兄さん、大変なことになってしまいましたね……。」

「ハハッ、大丈夫だよ。きっと父さん達がすぐに迎えに来てくれるさ。」

「……そうだと良いのですが。」

いつも楽しそうに話すエレナだったが、今回のことは相当応えたのだろう。

落ち込んでいるエレナに、なんとか元気になってもらいたい。そう考えた俺は昨日男に言われた事を思い出した。

「そうだ、エレナ食事にしよう!」

男は部屋に1ヶ月分の食料を用意していると言っていた。タンスの上の方を見るとダンボールが置いてある。恐らくあの中に食べ物が入っているはずだ。

二人で協力してダンボールを降ろすと、思っていた通り、中には食料が用意されていた。

果物にパン、缶詰など様々な物が入っていたが、俺はある一つの食べ物に目を奪われた。

「カップラーメンだ!」

どこの店でも売っている、ごくごく一般的なものだったが、俺はこの食べ物がたまらなく好きだった。

「ふふっ、兄さんは相変わらずですね。」

エレナにほんのりと笑顔が戻る、かく言う俺もエレナと会話をして少し緊張がほぐれたのだろうか?自分が空腹なことに今更気づいた。

「エレナ早く食べよう!」

「そうですね、でもインスタントラーメンを食べるなら、お湯が必要です。台所に行けばポットがあるでしょうか?」

見知った人と会話をして、大好きなカップラーメンを見つけた俺は殺し合いのことなどすっかり忘れてエレナと台所へ向かうのだった。

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