ずっと好きだった幼馴染を金で釣って本気にさせてみた

でずな

偽物から



「ねぇ花恋かれん。私がニートになっちゃって、お金を貸してくれるっていってたのになんで貸してくれないの?」


「そんなのいくら私がゆうの幼馴染だとしても、ただで貸すわけないじゃん。お金の重みっていうのを理解してほしいものだね」


「えぇ〜けち! けちけちけち! 私が知ってる花恋は有無を言わず貸してくれてたのに……」


「でもお金は貸してあげる」


「じゃあ貸して!」


「私の彼女になってくれるのならね」


「………………ん? 彼女?」


 優は考えず、お金がもらえるというエサにつられ彼女になった。それとすぐに優は家賃滞納を続けていたらしく、住居がなくなった。

 彼女のことを思い……いいや、私の下心で家に招き入れた。実質同居していることになる。家に帰るとソファでダラダラしている優。普通の人はこれを見て腹が立つのだろうか? 少なくとも私はずっと片思いしていた人が、同じ空間にいると考えるだけで幸福を感じる。

 このままでもいい。でも、それじゃあ私の片思いが虚しいまま終わってしまう。だから。


「ね。今度一緒に遊びいかない?」


「ん〜? 花恋最近忙しそうにしてるけど、そんな余裕あるの? せっかくの休日なんだし休んだほうがいいんじゃ……」


「で、行くの? 行かないの?」


「も、もちろん行く! 花恋と遊びに行くのなんて久しぶりだからねぇ〜」


「本当? いつも優ってドタキャンが多いし嘘だっていう可能性も……」


「いやいやいや。同じ家に住んでるんだし、ドタキャンなんてしないって。当日行きたくなくなったら、その時はよろしく!」


「ちゃんと保険はかけるのね」


 当日。優は私よりも早く起き、私よりも早く準備し待っていた。あれだけドタキャンを心配していたのに、どうやら遊びに行きたくて仕方なかったらしい。

 私も準備をしていざ外へ。この日は遊び尽くし、家に帰ってきてからもゲームをやり込んだ。


 この日からだった思う。私への優の態度が変わった。喋りかけても無視か逃走。頬が赤くなっていたり、チラチラ見る目を思うに多分優は私が望んでいた通り、好きになってくれたっぽい。確証がないのでまで半信半疑。


「優ぅ〜。何してるの?」


「うひゃひょ!? にゃにゃにってゲームだけど……」


「ふぅ〜ん。それって面白いの? 私もやってみよっかな」


「あ、あの……もしやるのなら教えるよ?」


「えっ本当!? 優が教えてくれるんなら、一緒に遊べるし一石二鳥じゃん」


「わ、わ、わ、私も一緒にいたい……」


 わざと後ろからギュッと抱きつきながらお願いすると、優は嬉しそうに顔がとろけた。

 これはもう疑う必要はない。そうと決まれば私のことを止めていたストッパーの意味がなくなる。

 

「それってずっとっていうこと?」


「うん。そ……う。花恋と一緒にいたら暇しなさそうだし、何より一緒にいて幸せだし」


「私も優と一緒にいると幸せだよ? 幼馴染じゃない別の意味で」


「わっ……わ、私もその幸せ。…………好きだから」


「なんて?」


「好き! 私は今、花恋のことが好きだから幸せっていったの! 絶対聞こえてたでしょ」


「いやぁ〜? 全く聞こえなかったけどなぁ〜。そっかそっか。私のことが好き、ね」


「同性のことを好きになるなんて、ましてや助けてくれた幼馴染のことを好きになるなんてキモいよね……。ごめん。変なこと口走って」


「変なことなんて言わないで。全然キモくなんかないし。だって私も好きだから」


「ふぅ〜ん。……え?」


 言ってる意味がわからない優に対して、私が企んでいた事の経緯をすべて綺麗サッパリ話すと、また「……え?」と絶句していた。

 

 なにはともあれ私達はこの日から偽物のカップルから、本物のカップルになった。本物になったからと言って、別段変わったことはない。唯一目に見えて変わったのは……。


「へへ。花恋って裸すべすべなんだねぇ〜」


 優が私にベッタリになったことくらい。

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ずっと好きだった幼馴染を金で釣って本気にさせてみた でずな @Dezuna

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