第122話 カラミティ・インフェルノ~「そうよ悪い!? 私はユータのことが好き! 大好き! 文句ある!?」~
「ここまで散々、手間をかけさせてくれたんだから、仕事しないと怒るわよ?」
アリエッタがまたもやドンと魔力をぶち込むと、心得たとばかりに、赤黒い炎を揺らめかせながら、煉獄の不死鳥が翼を広げた。
どうやらカラミティ・インフェルノは、すっかり従順になったらしい。
しかしこうやってみると、でかいな。
翼を広げた不死鳥は優に10メートルを超えている。
カラミティ・インフェルノはソシャゲじゃ数えきれないくらいに使ってきた魔法だけど、こういったサイズ感には、ソシャゲじゃまず味わえない肌感覚のリアルを感じる。
「ふふっ、いい子ね」
カラミティ・インフェルノの反応に満足したように笑みを浮かべると、アリエッタは凛々しい表情になってジラント・ドラゴンを見据えた。
「グルルルルル……!」
俺と大魔力による力比べをしていたジラント・ドラゴンが、睨まれたら睨み返すとばかりにアリエッタへと視線を向ける。
「アリエッタ、そろそろ俺も魔力の限界がヤバイ。完全にコントロールができたみたいだし、早めに頼むな」
「OK、ユータ。ここまで時間をかけちゃってごめんね。でもここからは私のターンよ!」
「頼んだぞ」
「任せといて!」
アリエッタは一度大きく息を吸って吐くと、最後の詠唱に入った。
「煉獄より舞い降りし、黒き炎の不死鳥よ――!」
アリエッタの意思に応えるように、煉獄の不死鳥がその赤黒い炎をこれでもかと激しく燃やしてゆく!
「あらがう全てを焼き尽くせ――! カラミティ・インフェルノ!」
ソシャゲで何度も見たキメ台詞とともに、アリエッタが天に掲げた両手をジラント・ドラゴンに向けて振り下ろした!
ローゼンベルクの誇る最強の破壊魔法が、ジラント・ドラゴンに向かって飛び立つ!
ここだ!
俺は残る魔力を振り絞って、ペンドラゴン・アヴァランシュへと注ぎ込んだ!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――――――っっっっっ!!!!!!」
長い時間はいらない。
この一瞬に、全てを注ぎ込む!
聖剣エクスカリバーが力の限りに光り輝いた。
こうすることで、ジラント・ドラゴンは俺との力比べに精一杯になり、カラミティ・インフェルノに対処することができなくなる!
さぁアリエッタ。
俺にできるおぜん立てはここまでだ!
俺が動きを封じている間に、カラミティ・インフェルノがジラント・ドラゴンに着弾した。
その瞬間、赤黒い炎がジラント・ドラゴンを文字通り飲み込んだ。
俺たちの攻撃をことごとく弾き返してきたジラント・ドラゴンの龍鱗が、煉獄の業火の前に成すすべなく焼かれ、剥がれ落ちてゆく!
「グルギィヤァァァァァァァ――――ッッッッ!?」
ジラント・ドラゴンが悲鳴のような叫び声をあげた。
俺との間で魔力による力比べをしているジラント・ドラゴンは、それにまったく抵抗することができない。
しかし煉獄の炎は、それだけでは勢いを弱めはしなかった。
激しく燃え盛る赤黒い炎は、さらに俺と押し合い圧し合いしていた魔力の黒蛇にも襲い掛かる。
ペンドラゴン・アヴァランシュを受け止めていた黒蛇が、いとも簡単に砕け散った!
「なんつー威力だよ!? まさかフルパワーのペンドラゴン・アヴァランシュよりも威力が高いのか!?」
ソシャゲの『設定上』は、そんなことないはずなんだが!?
「ローゼンベルクの姫騎士は心を燃やして戦うわ。熱く、激しく、情熱的に! だから今の私は、世界で最強なんだから!」
「どんな理屈だよ――っていや待て。それってもしかして俺のことを好きって――」
「そうよ悪い!? 私はユータのことが好き! 大好き! 文句ある!?」
「いや、ないよ。むしろ嬉しいっていうか」
「だからユータ、この猛々しく燃え盛る私の炎を見て! この炎の
アリエッタがやけくそ気味に叫ぶととともに、カラミティ・インフェルノがさらに激しく燃え盛っていく。
もはやジラント・ドラゴンは、それに抗する術を持たなかった。
煉獄の炎が、黒きドラゴンを完全に飲み干した。
「ぐ、ぐるぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――……」
最後に断末魔の叫びを残して、ジラント・ドラゴンは塵と消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます