第121話「ほんと強引! 特に最後のとこ! 特に最後のとこ! 特に最後のとこ!」

「ちょ、ゆ、ユータ!? なんでこんな時にそんなこと言うのよ!? だ、だってこれ、あ、愛の告白でしょ!? 時と場合を考えなさいよね! 今はドラゴンと戦っているのよ!?」


「こんな時だからこそ伝えたんだ。俺の気持ちを正しく伝えなきゃって思ったから。好きって気持ちを伝えないと、俺がアリエッタに寄せる信頼がどれだけ大きいかを、伝えきれないと思ったから!」


 言った!

 ついに言ったぞ!

 俺はアリエッタに好きって言ったんだ!


「だ、だからって、今じゃなくても!」


「もう言っちゃったから、今さら取り消せない! だからそこはもう問題じゃない!」


「た、たしかにそうだけど! 聞いちゃったのをなかったことにはできないけど! でも言ってることはメチャクチャよ!? 分かってる!?」


「メチャクチャでもなんでも言っちまったからな! さぁアリエッタ。俺は俺がアリエッタならできると信じる理由を伝えた! アリエッタが好きだってことをちゃんと伝えた! だから今度はアリエッタがやり遂げてくれ! 俺の想いに応えてくれ! 大丈夫、俺の愛するアリエッタならできる!」


「~~~~~~っ!」


「アリエッタならできる! 俺の大好きなアリエッタなら、絶対にカラミティ・インフェルノを完成させられるって俺は信じている! あとよかったら、告白の答えも聞かせて欲しいな!」


「ほんと強引! 特に最後のとこ! 特に最後のとこ! 特に最後のとこ!」


 アリエッタが3回も言った。

 2回ではとても言い足りなかったらしい。


「ははっ、強引なのはむしろアリエッタの大得意だろ? 問答無用で決闘を挑んできたり、ごり押しの力押しでユリーナの絶対防御を貫通したり。アリエッタと比べたら、俺の強引さなんてまだまだ子供レベルさ」


 俺はちょっとドヤりながら言った。

 そしてどうやらそれは、アリエッタへの最後の一押しになったようだった。


「……ふふっ、そうよね。強引なのはむしろ私の大得意よね」

「だろ?」


「あーあ! ユータのバカみたいに強引な告白を聞いていたら、ちまちま魔法式を手直ししてるのがバカらしくなってきたわ。ってわけだから、いい加減に言うことを聞きなさい! おりゃあああああ!!」


 気合い一閃。

 アリエッタが暴走しかけのカラミティ・インフェルノに、特大の魔力をぶち込んだ。


 俺の神騎士LV99の鋭敏な魔力感知は、それを「魔力で殴りつけた」と解釈する。


 それほどまでに強引でハチャメチャな魔力の通し方だった。

 ともすれば暴走の最後の一押しにもなりかねない荒っぽいやり方だ。


 しかしカラミティ・インフェルノはそこでピタリと暴走を止めると、見る見るうちに安定し始めたのだ。


 あちこちほころびがあった魔力の流れが、魔法式にデザインされた通りに綺麗に流れているのが分かる。


「ついにやったな。カラミティ・インフェルノの完全制御だ!」

「そうよ、やってやったわよ! どう!? これで満足でしょ!」


 息まくアリエッタの突き上げた両手の上で、再び渦を巻き始めた地獄の業火は、今や一つの姿を形作っていた。


 それは煉獄れんごくより舞い降りた、黒き炎の不死鳥。


 ソシャゲ『ゴッド・オブ・ブレイビア』でカラミティ・インフェルノを発動した時のビジュアルと寸分たがわぬ、目の前の敵全てに破滅をもたらす最強の破壊神たる不死鳥が、ついにこの世界に召喚された――!

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