第110話 激しい攻防

「直撃よ! やったわ!」


 神龍剣レクイエムというデバフを外してフルパワーになった俺の、Sランク魔法の直撃で勝利を確信したアリエッタから歓声があがる。

 だが、しかし!


「だめだ、倒しきれていない! くっ――!」

「ユータ!?」


 俺がその場から飛びのいたほんの一瞬後。

 爆発の煙が漂う中から、俺のいた場所へと向かって、一筋の漆黒の魔力ビーム砲撃が放たれた!


 Sランク魔法にはSランク魔法でお返しとばかりに、ジラント・ドラゴンが得意のドラゴンブレスを放ったのだ。


 それはつまりジラント・ドラゴンがいまだ健在であることの証だった。


「グルルル……!」

 怒りを帯びた唸り声を上げながら、ジラント・ドラゴンの巨体が煙の中から、のそりと姿を現す。


「嘘でしょ?」

「正直、今のはかなり手応えがあったんだけどな。残念。あと一歩、届かなかったか」


 かなりの魔力を聖光に変えて打ち込んだから、さすがにノーダメージってことはないはずだ。

 だけどそれでも届かない。


 さすがはドラゴン。

 神騎士LV99でも、俺一人だけでは勝てないようだ。


「あんな大威力の魔法攻撃を喰らっても平気だなんて――」

 アリエッタが息を飲む。


「本当に硬いな。俺が思っていた以上の防御力だ。しかもそれだけじゃない。防御障壁によって威力をかなり相殺されてしまう――っと、来るぞ! 散開だ!」


 俺とアリエッタとキララのいる場所に向かって、ジラント・ドラゴンが巨体で突っ込んできた。


 3人が3方向にそれぞれ回避すると、


「グルァァァァァァァァァァッッ!」

 ジラント・ドラゴンは迷うことなく俺の回避先に向かって、漆黒のドラゴンブレスを放ってくる!


「さっきの一撃で相当お怒りみたいだな。でも舐めるなっての!」

 俺は聖剣エクスカリバーに力を込めると、暗黒のブレスをぶった切って無力化した。


 しかしジラント・ドラゴンは、


「グルァァァァァァァァァァッッ!」


 たて続けに2発3発4発5発と、連続してドラゴンブレスを放ってくる。

 

「くっ、この! ハンパなく連射性能が高い……!」


 俺は聖剣エクスカリバーにドンと魔力を込めてドラゴンブレスに連射に耐えるが、


「グルァァァァァァァァァァッッ!」

「グルァァァァァァァァァァッッ!」

「グルァァァァァァァァァァッッ!」


 足を止めた俺にむかって、ここぞとばかりに撃ち込まれるドラゴンブレスを前に、俺は完全に防御一辺倒になってしまった。


 次から次へと打ち込まれるドラゴンブレス。


「ぐぅ……! ヤバイ、押し切られる――」


 とどまることを知らない漆黒のドラゴンブレスが俺を飲み込みかけた時、


「悠久なる氷河は、何者をも阻む絶対なる防壁とならん! 絶対氷河の氷盾――アブソリュート・グレイシャー・フリージング・シールド!」


 ユリーナの凛とした声とともに、俺の眼前に分厚い氷の盾が現れた。


 氷の盾はドラゴンブレスの連射の前にすぐに砕けて力を失うが、俺がその場を離脱するのに十分な時間を与えてくれる。


 さらにキララがジラント・ドラゴンの懐に飛び込むと、


「お姉さま、さっきカガヤ様が攻撃したのと同じところに攻撃です!」

 クララの指示を受けて、


「わかった! 真・キララ・ライジング・ドラゴン・アッパー!!」


 最近シリーズ6が出た某・有名格闘ゲームの某・真ショーリューケンのようなド派手なアッパーパンチを、さっき俺がブラスト・エクスカリバーを打ち込んだ場所に寸分たがわず打ち込んだ!


 ドン!と、ミサイルが着弾したかのような凄まじい衝撃音とともに、大気がビリビリと震える。


 踏ん張るキララの足下がグン!とめり込んでクレーターとなり、ジラント・ドラゴンの巨体が一瞬ふわりと浮き上がった。


「おいおい、純粋打撃によるSランク到達かよ──!?」


 キララの右拳による一撃が、瞬間的にSランクの高みへと到達していることを、神騎士LV99の感知能力が教えてくれる。


 パンチでSランクとか、マジでヤバすぎだろキララ。


 さらにさらに、キララの攻撃に合わせるように、


「ライオネル・ストライク・フルチャージ!」


 再び激しく燃え盛る炎の獅子となったアリエッタが、威力だけはSランクの高火力魔法でジラント・ドラゴンに突撃する!


 ジラント・ドラゴンは2人のコンビネーション・アタックによってバランスを崩し、滑って転ぶように背中から地面に倒れ込んだ。


「みんなサンキュー! マジで助かった!」


 俺は仲間たちの一連の攻防の間に、ドラゴンブレスの脅威から逃れると、リューネのところまで後退して一息をついた。

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