第58話 神騎士LV99という最強スペックをこれでもかと押し付ける、これが俺の作戦だ!

「せいやー! うりゃー! たー!」


 どこか力の抜ける掛け声から繰り出される、しかし破壊力抜群のキララのパンチとキックを、


「くっ──!」

 俺は回避と受け流しでしのぐ。


「キララライジングドラゴンアッパー!」

 某格闘ゲームで有名な昇龍拳のようなド派手なアッパーも、紙一重で回避。


 そして何度も何度もフェイントをかけて、やっとこさ俺のフェイントに釣られて大きな右パンチを盛大に空ぶってくれたキララに、


「ペンドラゴン・ファング!」


 俺は150発ほどの光の矢をゼロ距離でぶっ放した。


「わきゃっ!」

 まさかこの距離で撃たれるとは思っていなかったのだろう、盛大に吹っ飛ぶキララ。


 よし、狙いどおりだ!


 俺は間髪入れずにキララを追撃する。

 キララがお得意の、相打ち狙いのカウンター迎撃体勢を取ったところで、


「ペンドラゴン・ファング!」

「あわわわ!?」

 再び150発ほどの光の矢を至近距離でぶっ放した!


 再び吹き飛んだキララに、俺は更なる追撃をかける。

 俺は今度こそ近接打撃に行くと見せかけて、


「ペンドラゴン・ファング!」

 三度、150発ほどの光の矢を至近距離で撃ち放った。

 これまた全弾がキララに直撃。

 ついにキララは体勢を立て直すことができずに、吹っ飛ばされた勢いそのまま地面を転がった。


「いたたたたた……。うにゃ!? 防御加護がガッツリ削られちゃってる!? もう、おにーさん! こんな近い距離で遠距離魔法を撃たないでよね!」


「接近戦だからって、飛び道具を撃っちゃいけないなんてルールはないからな」


「た、たしかに! そんなルールはないかも! キララ気付かなかった! おにーさん、すごい! なるほど納得! これは革命的アイデアだよ!」


「いや、そこまですごくはないと思うが……まぁなんだ。たしかにキララの接近戦は厄介だよ。おバカな言葉遣いとは裏腹に、動きはすごく洗練されてるし、相打ちカウンターを常に狙ってくるから下手な反撃もできない」


「お、おバカ!? ちょっとおにーさんってば、ひっどーい! でも人のことバカって言う方がバカなんだからねー! やーい、おにーさんのバーカバーカ!」


「じゃあバカって言ったキララはやっぱりバカなんだよな?」

「え? あれ? そうなっちゃうかも? あれれれ?」


 起き上がったキララが小首をかしげる。


 とまぁ脱力するほどおバカなキララだが、こと戦闘に関しては単純かつ明確な意図を持って攻撃してくる。


 少々の被ダメージは回復すればいいから、とりあえず自分の一撃を当てる。

 攻撃を喰らいそうでも、カウンターを当てられるなら相打ちOKで殴りに行く。


 そういう思想のもとで、ひたすら攻撃を繰り出してくるのだ。


 だがそれは裏を返せば、キララは防御がおろそかだとも言える。

 圧倒的な打たれ強さと回復能力を持っているからか、攻撃の苛烈さに比べてキララの防御技術は正直大したことがない。


 そこで俺が考えたのが、キララとコンタクトをしない、ほぼゼロ距離での射撃魔法だ。

 キララからすると避けるのが困難で、コンタクトしないためにカウンターを受ける心配もない。


 本来ならキララにとって無視できるDランク魔法のペンドラゴン・ファングは、しかし神騎士LV99の俺が使えば、その威力はBランク以上に相当する。


 しかもこいつは発生が早いときた。

 連射も可能だ。


 LV99神騎士と超ハイスペックな神龍剣レクイエムなら、他の姫騎士では到底受けきれないキララの嵐のような猛攻も、ある程度は対処できる。


 しっかりと攻撃をさばきつつ、発生が早い高威力射撃魔法の近接ブッパでキララの防御加護を削り取る。


 神騎士LV99という最強スペックをこれでもかと押し付ける、これが俺の作戦だ!


「さあ、ここからは俺のターンだ。ガンガン行くぜ」


 形勢は一気に逆転した。

 俺はキララを圧倒していく――!


「キラキラーパンチ!」

「なんの! そこだ! ペンドラゴン・ファング!」


「ひあぁっん!? あうう~! ユリーナ様ぁ! このままだと負けちゃいます~! ヘルプー!」


 自らの攻撃は当たらず、逆に防御加護をゴリゴリと削られ始めたキララが、ついに泣き言を言い始めた。


 もちろん俺の対応に対して、更に対応し返すことはできるはずだが、そこはそれ。

 キララはアホの子だから、そんなことを思い付く頭はない!(断言)


「さあどうする? 降参するか? それともこのままガードアウトするか? 俺はどっちでも構わないぜ?」

「うう~~! 負けちゃうよ~!」


 この時、俺は半ば勝利を確信していたのだが──。


「キララをもってしても勝てませんか。さすがですわね無礼男、いえユウタ・カガヤ。認めますわ、あなたの強さを」


 そこでユリーナの声が聞こえてきた。

 隠し球のキララが封じられ、かなり不利な状況のはずなのに、その声には動揺した様子は微塵も感じられない。


「まさかキララだけでなく、まだ何か隠している切り札があるのか?」


 いや、まさかな?

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