第11話「だって男に抱っこされたら妊娠するんでしょ?」
「に、妊娠だって? 急に何の話だよ?」
余りに突飛すぎて、俺はおうむ返しに聞き返してしまった。
だって、いきなり妊娠したら困るとか言われても、なぁ?
まさかお姫様抱っこで妊娠するとか、そんなことは思っていないよな?
……まさか、な?
アリエッタは父親と執事以外の男性とはほとんど接することがなかった、純粋培養の箱入りの姫騎士って設定だったけど、さすがにそんなことは――、
「だって男に抱っこされたら妊娠するんでしょ? 実家の教育係のメイドに、どうやったら子供ができるのって聞いたら、そう言っていたわよ?」
「……(滝汗」
あったーー!!
まさかそんなことが、あってしまったぁーーっ!!!!
さすがのアリエッタ推しの俺も、この事実は知らなかった。
やれやれ、また1つアリエッタについて詳しくなってしまったよ。
異世界に来て良かった!
「あ、えっと、別にアンタの子供が嫌だって言うんじゃなくて。でもまだ学生だし、私は立派な姫騎士にならないといけなくて、男女交際とか子育てとかはまだ早いかなって――」
アリエッタがなにやら小声でごにょごにょ言っていたが、テンションが上がっていたのと、ギャラリーがキャーキャー声を上げているせいで、うまく聞き取ることができなかった。
「いや、お姫様抱っこしただけで妊娠はしない」
「え? そうなの?」
「そうだよ」
俺の腕の中で、アリエッタが不思議そうに小首をかしげた。
アリエッタは優秀な姫騎士となるべく、「汚らわしい男」との接触を限りなく排除された世界で育ってきたっていうのもあって、エッチな知識に疎かったり、斜め上に間違っていたり、男をやたらと毛嫌いしている。
それでもまさかここまでとは思わなかったけど。
ソシャゲは対象年齢に未成年児童が含まれているのもあって、あまり性的な会話はなかったんだよな。
その割に、絵は際どいのが多いんだけど。
肌色いっぱいのビキニ水着とか、ミニスカサンタとか、逆バニーとか、着替え中とか。
文字で書かなければいいってもんでもないのでは? と思わなくもない。
それはさておき。
多分だけど、アリエッタの性教育について過保護すぎて、正しい子作り方法を敢えて教えていなかったんだろう。
コウノトリが運んでくるとかそういう、箱入りお嬢さまあるあるである。
さすが俺の推しの子。
なんて可愛いんだ!
「ほんとにほんと? 妊娠しない?」
「本当にしないから」
「ふーん、そうだったんだ。じゃあじゃあ、どうやったら子供ができるの?」
「えっ!? それはその、男の子のおしべと女の子のめしべが触れ合って、うまく受粉する的な……」
まさかの追及を受けて、俺は思わずしどろもどろになってしまった。
詳細はぼかしつつ、なんとかそれっぽく答える。
「すごいじゃない! うちの優秀なメイドも知らないことも知ってるなんて、アンタって強いだけじゃなくて物知りなのね」
「……かもな」
俺は真実を教えたくても教えられないメイドさんの気持ちを
せっかく推しの子のアリエッタに褒めてもらえたのに、わざわざ否定する必要はない。
「だけど、ちょっとふんわりしてるわね? 具体的にはどうやるの? 人間のおしべとめしべって、どういうこと?」
「具体的には裸で――って、それは後でリューネにでも聞いてくれ! 外で話すようなことじゃないと思うからさ」
「ふーん。分かったわ、そうする」
くっ!
なんで俺は周りに人がいる状況で、推しの子をお姫様抱っこしながら、子作りの方法を説明させられそうになっているんだよ!?
俺にそんな
どの客層向けだよ、これ!
とまぁ。
話をしながら、俺はリューネのところまでアリエッタをお姫様抱っこしていくと、そっと優しく下ろしてあげた。
「あ、ありがと」
「おう」
俺の見立て通り、アリエッタは誰の支えも必要とせず、そのまま自分の足で立った。
「アリエッタ、大丈夫!? 回復魔法をかけようか?」
そんなアリエッタに、リューネが開口一番、心配でいっぱいといった様子で話しかけてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます