第11話
今日はせっかくだし貰ったお小遣いを使ってみようと思う。
ということで初めて道案内無しで街へと行くことにした。
テラに街へ行ってくると言おうと思ったけれど、いつの間にか家から居なくなっていたので、そのままリラを連れて街へ行く準備をして外へと出た。
記憶力はいい方なので、前に通った道ははっきりと覚えている。
リラとしっかり手を繋いで森の中を歩き続けていれば、迷うことなく直ぐに街へと着くことができた。
相変わらず以前来た時と変わらない人間の量である。
「何買おっかなぁ。リラは何か欲しいものある?」
「無い。」
「だよね。うーん、特に欲しい物ないけどせっかく来たしお小遣いもあるしなぁ。」
どうせなので近くにあったお店で飲み物を買った。
綺麗なピンク色のグァバジュース。初めて飲んだけれどかなり美味しい。
今度はそれを持って街を見て回ったけれど他にピンとくるものは特に見当たらなかった。
やっぱり今日はもう帰るかぁ、そう思った瞬間、目の前の路地から急に人が出てきてぶつかってしまった。
あらデジャビュ。
白にピンクが映えて、これはこれで綺麗な芸術作品ができたんでは無いか。
なんて相手の白いシャツにビシャビシャにかかったジュースを見ながら現実逃避をする。
「⁈おいガキ!!!ふざけるなよ⁈このシャツ高かったんだぞ⁈」
「それはごめんなさい。でも私だけが悪い訳じゃ」
「……まぁそうだな。」
え?このまま怒鳴られて殴られるコースかと思ったけど今回は違うらしい?
「だが新しいシャツ買うための金は払ってもらう。」
「はぁ⁈なんでよ!」
「お前がぶっかけてきたからに決まってんだろ⁉︎」
「…いくらよ。」
「20ディアだ。」
そんな高いの⁉︎私いま1ディアしかないのに…!
「……1ディアしかない。」
「ほぉ。じゃあ稼いで貰うしかねぇな。」
「稼ぐってどういう…」
「いいからこっち来い。」
そう言って私の二の腕を引っ掴んでズンズンと進んでいく男。
痛い、跡になるじゃない!と言ったけれど無視された。
リラと逸れないように先程より強く手を握る。
そのまま引っ張られ続けて着いたのは、なんだか見覚えのある建物だった。
ドアを開けて入れば、そこには装備をした人間が沢山いた。ギルドだ。
私が前世でいたギルドと似た雰囲気の場所。
木を基調として作られ、天井は吹き抜けになっているそこは、少し自然が感じられて心地がよい。
ざっと中を見渡していると、男が再び私の手を引っ張って奥のカウンターまで進んでいった。
「おい、こいつここで登録して働かせろ。」
「新規の方ですか?それだとここでは初めの依頼は既存の方とパーティを組んで頂かないとこなせませんが、あなた方3人で組まれますか?」
「チッ、そうだった。19ディア稼がせるには他に誰か探すしかないか。」
受付係がパーティを組まなければ、と言うと男は苦虫を潰したような顔をした。
へぇ、このギルドはそんなルールがあるんだ。
というか今19ディアって聞こえたんだけど。
「まちなさいよ。10ディアでいいでしょ。」
「あ⁈20きっちり払ってもらうに決まってんだろ⁈」
「そんなのおかしいわ!だって貴方にも悪いところあったじゃない!」
「何してんだお前ら……。」
いくら返すかということで言い合いをしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の主の方を見ると、そこにはテラがいた。
あぁ、そうだ。ここってこの間ついて行った時にテラが入って行ったギルドだったんだ。
「テラ、お前の知り合いか?なら丁度いい。お前、こいつらとパーティ組んで19ディア稼いでこい。」
「あ?」
「こいつが俺のシャツ汚したんだよ。ほら。」
「……芸術みたいでいいんじゃねぇか。」
「んなわけあるか!」
テラ、私と同じこと考えたの…。
なんだかシンパシーを感じてテラを見遣れば、ジトっとした目で見返された。
「じゃあ、俺はこれから用事があるから。後は頼んだぞ。」
「ちょっと…!私は全額払うなんて…!」
「ウルセェな。いいから払え。逃げたらどうなるか分かってんだろうな。」
そう吐き捨てて男はギルドを出て行った。
「よくも俺を面倒ごとに巻き込んでくれたな……。」
「……ごめんなさい。」
「はぁ……。とっとと依頼こなしてあいつに返すぞ。リラも出来るか。」
「うん。」
「ごめんねリラ……。」
「別に。」
今世の私は不幸体質だったりするのだろうか。
今回産まれてきてからあまりにも運が無さすぎる気がする
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