第9話

家の周りを散歩してみて分かったことがいくつかある。


まず、この周辺には魔物が見当たらないということ。

大方、テラが縄張りでも張っているのだろう。


次に、この家以外に近くに建物は見えないということ。

けれど、私が住んでいた家と違って、数十分ほどあるけばチラホラと建物が建っているのが見えた。


後は、そこの住人について。

私が歩いていると、1人おばあさんと出会った。他の人にはまだ出会ったことが無い。


そのおばあさんはキヨミさんというのだそう。

小さな子が大好きでお喋りなおばあさん。

私を見かけると嬉しそうに話しかけてきた。


名前は教えたけれど、住んでいる場所は言ってもいいのか分からなかったのと出会ったばかりの人に教えることは嫌だと思ったので、聞かれたけれど適当に答えておいた。


キヨミおばあさんは、私の頭を撫でて可愛がった後、ちょっと待っててと言って家へ戻って行った。

その内に私は家へと急いで戻った。


どうしたって人が信じられない。

だから、あの人が戻ってくる前に、こちらに深入りしてこようとする前に、切り上げてしまった。


もうあの辺りへは行かないようにしよう。

またあの人や、別の人に会ったら面倒だ。


この3つのことぐらいしか、周辺について分かることは無かった。

ここを出て行ってもすぐ生活できるように、もうちょっと探索が必要だろう。


あと、テラについて分かったことがもう一つ。

彼は頻繁に日中外出するので、何をしているのかと少し後を付けてみたことがある。

その時に彼が向かって行ったのは街のギルドだった。


ギルドなんかに何しに来たのだろうと思ってじっと見ていると、不意にテラがコチラをギロリと睨んできた。


私がずっと着いてきていたのがバレていたらしく、

「目的地が分かったのだからもういいだろうさっさと帰れ」と凄い形相で言われてしまった。


テラについて知ろうとする行動を不快に思っているように見えたので、素直に謝ると、彼はさっさとギルドへと入っていってしまった。


魔物がギルドに入れる訳もないので、どうやら人間として登録して依頼をこなしていっているっぽい。


家に帰って来た彼を見ると、報酬の入った袋を持っていた。

なるほど、稼ぎはそこからきていたのかと納得したのと同時に、今度から彼を詮索することはやめておこうと思った。


そんなことを続けていれば、いずれ堪忍袋の尾が切れた彼に殺されそうだ。


ちなみに、その次の日から指輪を見つけてくれたお礼にと時々お小遣いが貰えるようになったのはまた別の話。

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