第8話

…暇だ。

暇すぎる。


大掃除もこの前やったし、お昼はさっき食べたし。

何にもすることがない。


あんまり街には行きたくないし、行こうにもこの間みたいにウザい奴らが絡んでくるのが面倒だからやっぱり嫌だ行きたくない。


というかそもそもお金が無い。


前世では討伐に行ったり、出かけたり鍛錬したり…。


そうだ、鍛錬でもしようかな…。


いやでもそんな所テラに万が一にも見られたら、敵認識されてそのまま殺されるかも…。


うん、鍛錬はまだやめておこう。


そうなったらいよいよやることがない。

さっきから1時間は自室で仰向けに寝転んだままだけれど、眠くもならない。


「リラ、起きてる?」

「うん。」

「なんかして遊ばない?」

「遊ばない。」


…そっかぁ。

うーん、ちょっと散歩でもしてこようかな。


そう思い立ち自室を出て1階へと降りる。

ふとキッチンの方を見れば、テラが遅い昼ご飯を食べていた。


ちなみに今日はチャーハンだ。


そういえばご飯作るだけ作って感想を聞いたことなかったな。


一応住まわして貰っているから、家主の口に合う料理くらいは出したい。


「ちょっと散歩してくる。」

「好きにしろ。」

「…」

「…なんだ。」


私がマゴマゴしていると、テラは米粒を口へ運ぼうとしていたのを一旦止めて、訝しげにこちらを見てきた。


美味しいか聞くだけにこんなに勇気がいるのか。


自分のためにしか作ったことがなかったからこんなことは初めてだった。


「あの、さ。」

「さっさと言え。」

「いや、その、それ。」

「あ?」

「チャーハン…美味しい…?」

「…」


質問した途端に黙られてしまった。

もしかして不味かったのか?


いやでも、不味いならコイツは文句を言ってくるはずだし。

今までもちゃんと完食してたし。

それは無いはずだと信じたいんだけど…。


「…えっと…」

「…い。」

「え?」

「…美味いって言ったんだ。もう言わねぇ。」


ボソッとしていて聞き取りにくかったけれど、美味いと言ったらしい。


なーんだ、良かった。

それなら普通に早く言ってよと思いながらテラを見れば、心なしか耳がほんの少し赤くなって見えた気がした。


いや、気のせいか。

あいつはそんなことで照れるような奴ではないはずだ。


けれど美味しいと言われるのにはなんだか慣れていなくて。

気恥ずかしさを紛らわすようにして、私は家を出た。

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