飯食ってんのか?

「お帰り」


「死んだのか?」


「猫なら、逃げた」


「あの野郎、ベランダから落としやがった!」


「だね」


「妙伊子は、あいつのどこがいいんだよ」


「君と違って優しいらしいよ!まあ!結婚したら変わるかもしれないよね」


「何食ってんの?」


「これ?蟹のステーキ」


「何それ?」


「食べる?」


「うん」


パチンと指を鳴らしたら、蟹のステーキが現れた。


綿菓子みたいなふかふかの椅子に座る。


パンケーキみたいなほどよい弾力のあるテーブル


「いただきまーす」


「どうぞ」


蟹の身だけをくりぬいてるのか!


いやー、上手にステーキにしてる


「あちらは、料理上手だろ?」


「これって、地獄で」


「作られてるよ」


神は、そう言いながらグラスにワインを注いでる。


「神って、ワイン好きなの?」


「ワインは、流れる血に似ていて好きだ」


トクトクとワインをいれて、差し出された。


「ありがとう」


ゴクリと飲んだ、それは極上品だった。


「何だこれ?」


「人間が、私に献上してくれるんだ。極上品だろ?どんなワインよりも、うまい。愛情を込めて作られている。フルーティーなのに、奥ゆかしい味わいだろ?」


「飲んだ事ない味だよ」


「だろうね」


俺は、ゴクッ、ゴクッとそのワインを飲み干した。


「プロポーズしたいんだろ?」


「ああ!するよ」


「一年だとしても?」


「それでも、するよ」


「彼女は、きっとまた別の人と結婚するよ」


「わかってるよ」


「君を思い続けてはくれないよ」


「わかってるよ」


「それでも、いいの?」


「いいよ」


「そう」


そう言って、神はまたステーキを食べてる。


俺の人生ってなんだったのかな…


「堅苦しく考えてどうするんだ?どうせ、戻っても一年なら!愛する彼女と過ごせばいいじゃないか」


ワインをまた注いでくれた。


「戻ったら、生まれ変わりの道にいくんだろ?」


「そうだね」


「結局、何なんだよ!何で死んだんだよ」


「それが、いまだに謎だよ」


「俺が死んだ理由か?」


「そう、それだよ!死神手帳と連動してるから、間違いなんて起きないのになー。最近は、デジタルになったから特に間違いは起きなかった。なのに、何故?君は、ここに来たのかな?」


「さあーな。でも、事故だったんだろ?」


「事故は、事故だよ。だけど、他殺だったのかな?それとも、自殺?」


「俺は、自殺なんかしねー」


「プロポーズする日だったもんね」


「そうだよ」


「じゃあ、他殺かな?」


「怨まれてたのか?誰かに…」


「どうかな?よくわからない」


神は、よくわからないものを食べる。


ゴリゴリと音をたててる。

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