第17話 光と影
管理番号H-2023のコンピュータからモモとリコの学生データがダウンロードされていた。そのコンピュータの使用者はジラルディー教官であることも紛れもない事実である。データがダウンロードされた日付はモモとリコが不審な気配を感じ始めた時期とも一致していた。
ロキは内心何かの間違いだと思った。ジラルディーは軍の司令部でも有名な人物で、自らも若い頃から慕い尊敬していたからだ。
「・・・一応確認してみるか。」
ロキはマスターコンピュータ内のデータベースを検索し始めた。
各個人のコンピュータは指紋認証がなければログインすることができない。しかしマスターコンピュータからなら個人のコンピュータに侵入できるかもしれないと考えたからだ。
珍しく冷静さを失いかけていた。若い頃から憧れ、目指した崇高な何かが、もしかしたら全く別の何か得体の知れないものだったかもしれない。今まで大切に抱え込んで守っていたつもりだったものは、空虚な偶像だったかもしれない。不安にも恐怖にも似た感情がその空間を支配していた。
「カタン」
何かが机にぶつかるような小さな音がした。
教官室の入り口に、誰かが立っている。警備員だろうか、、、。
消灯時間が過ぎており、教官室の外廊下は電灯が消えている。暗いので顔がはっきりと視認できない。
「学生か?」
影の主はゆっくりと教官室に入ってきた。
「・・・ジラルディー教官!?どうしたんですか。帰られたのでは。」
「忘れものをしてしまいまして。取りに戻ったんです。ではこれで。」
ジラルディーは一度背を向けて数歩歩くと、立ち止まった。
「・・・ロキ教官、座る席を間違えていませんか。あまりいらないことを詮索しないほうが、ご自身のためだと思いますよ。今日はもう遅い。帰ったほうが良いと思います。」
ジラルディーは振り返ることなく呟くと、暗い廊下の先に消えていった。
しばらくして、ポツンと灯いていた教官室の蛍光灯は消え、訓練学校を暗闇が包み込んだ。
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