第15話 待ち人

「せっかく当番の仕事を片付けて急いできたのに、部屋にいないなんてひどいじゃないか。」


サッチはむくれ顔だ。しばらくリコの部屋で待っていたが、時間を過ぎても誰も来ないので自分の部屋で当番日誌を書いていたのだった。


「ごめんって。ロキ教官のところに行っていたんだよ。」


「サッチごめんね。」


リコとモモはサッチの肩に手を当てながら謝罪した。


「まあ、いいけどさ。何か収穫があったんだろ?」


「そうね。この間、リコを追いかけて電車に乗った日、アルカディアの2人組がいた話は知っているわよね。」


「うん。聞いたよ。」


「実は最近、私もリコも家や外で不審な気配を感じることがあるのよ。誰かに見られているような。」


「それ本当?ちょっと怖いね。」


「私が引っかかっていたのは、最近まで2人組は私とリコの素性を知らなかったのに、突然家まで把握しているのはなぜって思ったの。」


「アルカディアの夜明けの襲撃があったあの日、あのレストランにいたのが私とリコだってことが、アルカディア側に比較的最近、伝わったんじゃないかという仮説ね。」


「うん。たしかにモモが言っていることはそうかもしれないね。・・・誰かが情報をリークしてるってこと?」


「さすがサッチ。」


「サッチはすごいな。俺なんかモモに言われても全然分からなかったよ。」


「リコは鈍感なのよ。」


「ひどい。」


「話をもとに戻すと、ロキ教官なら何か知っているんじゃないかと思ったの。あの日、あのレストランに私達2人がいたのを知っていたのはロキ教官だけだから。」


「さっき教官室で話していて、それで遅くなったの。」


モモはロキ教官から渡された黒い封筒のことをサッチに話した。


「ちょっと、2人とも危ないんじゃない?」


「手紙のことは教官全員知っていて、レストランで私とリコがいたことも全教官が知っているみたい。」


「もしかしたら、教官の中にアルカディアの内通者がいるかもしれないってこと?」


「サッチは勘がいいわね。今日までで分かったことはそれだけ。ロキ教官も、目を光らせておくって。」


「教官の中に敵が紛れ込んでいたら最悪なんてもんじゃないよ。学生データを見れば、家の住所も電話番号も分かるよ。」


「これからは、私達も教官側に目を光らせましょう。何か分かったら共有すること。帰り道も一緒よ。リコもいいわね。」


「・・・はい。」


リコは蛇に睨まれた蛙のように、小さくうなずいた。

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