第11話 昼下がり

「毎週あんな美人とデートしてるの隠してるなんて。」


サッチは手に持っていたコーヒーのプラスチックカップを屋上の柵の淵に置いて、不機嫌そうに言った。


「別に秘密にしていたわけじゃないって。ふたりしてついてこなくったっていいじゃないか。」


訓練学校の昼休みは、トレーニングをしている学生もいれば、寝ている学生もいる。


リコとサッチはだいたい一緒に屋上でコーヒーを飲むのが日課になっていた。


「まあ、それは冗談としてさ。あんな美人とどこで知り合ったの?。」


不機嫌そうなフリをしていただけで、サッチはとてもうれしそうだ。


「たまたまあの噴水で出会ったんだよ。まあ運命のいたずらってやつかな。」


「・・・。」


「まあ、なんでもいいけどさ。あの子、どこかで見たような気がするんだよね。うーん、、思い出せない。」


「どうせまたお前の好きなマイナー女優とか、地下アイドルとかに似てるとかだろ。」


「違うって(笑)」


「ドンッ」


「!?」


突然二人の目の前に勢いよく黒いカバンが置かれた。


現れたのは眉間にしわを寄せたモモだ。


「楽しいお話し中失礼しますね。」


「モモさん、何か怒ってらっしゃいます?」


「別に。毎週毎週、デート楽しそうで何よりです。」


「そういえば、来週テストでしたよね。お勉強が苦手な誰かさんは、遊んでる暇なんてあったかしら。そういえば、去年のテスト問題、ジョゼット先輩から内緒でもらったのよね。これから勉強しなきゃ。またねー。」


モモは、解答用紙らしい紙をカバンの中から取り出すと、ひらひらとなびかせながら

階段のほうへ歩いていく。


「ちょっと、待ってって。モモさん。モモ様―!」


二人が必死で追いかけたその時、校内一斉放送のチャイムが響いた。


「訓練生に連絡事項あり。至急屋内訓練場に集合せよ。繰り返す。~」


「ロキ教官の声だ。また誰か何かやったのかな。」


サッチが心配そうに言う。


というのも、最近生活態度がたるんでいるからと、つい昨日全員で腕立て伏せを1時間連続でやらされたばかりなのだ。


「とりあえず急ごう。」


三人は屋内訓練場へと急いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る