第10話 密会
噴水公園では、読書をする人やチェロの練習をする大学生、様々な人たちが、思い思いの時間を過ごしていた。
夕焼けが空を包み、噴水の水面はゆらゆらと茜色に染まっていく。
モモとサッチは茂みの影に隠れながら、リコを探した。
「いたわ。」
「えっ、どこ?」
「噴水の向こう。」
噴水の淵に本を片手に座っているリコがいた。
「あいつ、読書なんかしたっけ。」
しばらくすると、リコは立ち上がった。大きな犬が噴水の向こう側から走ってきて、尻尾を振りながらリコに近づいて来るのが見える。リコは笑いながら両手で犬の長い毛並みをを整えるように撫でた。
すぐに犬の飼い主と思われる女性がやってきて、リコと親しそうに話を始めた。
「あの子は誰だろう。」
「なるほどね、、最近付き合いが悪いと思ったら。そういうことですか。」
「サッチ、帰るわよ。」
モモは不機嫌そうに言うと、駅に向かって足早に歩き出した。
「えっ、ちょっと待ってよ。夕飯は?おなかすいちゃったよ。」
「本日の夕飯は各自とします。以上解散。」
モモは歩くのをやめずにそう言うと、駅に向かって一人で行ってしまった。
「モモ、なんか怒ってる?」
夕暮れ時の噴水公園で一人、サッチは肩をすくめた。
「うーん。あの子、どこかで見たような・・そんなことより、夕ご飯、夕ご飯。」
サッチは明かりが灯り始めた繁華街のほうに歩き出した。
「って結局一緒に食べるんじゃん。」
「おなかがすいたんだから、しょうがないじゃない。」
サッチとモモは中華料理店で一緒にラーメンをすすっていた。
「さっき、電車の中でアルカディアの夜明けのメンバーがいたわ。私とリコを狙っているみたいなことを話してた。」
「この間モモが話していた日のことだね。ロキ教官が助けてくれたっていう。」
「うん。」
「モモ、気を付けないとだめだよ。顔を見られたんだろ?町に出る時はマスクでもして顔を隠さなきゃ。」
「いやよ。マスクなんてしたらかわいい顔が台無し。まあでも、気を付けないとね。リコにも言っておくわ。」
モモは財布からコインを1枚出すと親指でピンと頭上にはじき、右手でキャッチすると、サッチの顔を覗きこんだ。
「うーん、、、、表!」
モモはゆっくりと右手を開く。
「むむむ。」
「ごちそうさまー。またよろしくねー。」
サッチは机に突っ伏した。
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