第9話 知らない報復

ごめん。俺は無力だ。

もっと強い人間になりたい。   


間違っていることは間違っていると社会に言える、心に彩りがあったあの頃に戻りたい。飼い慣らされて色を失った心を自身の涙で濡らす。



まるで自分の心を投影したように雲が立ち込め、やがて雨が降ってきた。傘もささずにフラフラと帰った。


何も考えたくなかった。先週と同じように、

気を失うように夕暮れ時には眠ってしまった。



そして次の日。いつも通りに出勤し、会社に着いた。


が、いつもと様子が違う。社内が騒々しい。何かあったのだろうか。

なにやら各部署の部長達や幹部達が

会議室に集められているらしい。

新しいプロジェクトでも始まるのだろうか。


しばらくして部長が帰ってきた。   



「後で辞令が出ると思うがみんなには先に伝えておく。〇〇君に懲戒解雇を勧告する運びとなった。社長と当社幹部、我々各部長との会議の末に出た辞令である。以降の人事についてはまだ未定だ。以上。業務に戻りなさい。」


〇〇君とは件の上司の名前だ。

でも何故。昨日の勤務怠慢がバレたのか。しかしどこからバレたのか。   


懲戒解雇を受けたのか。


たしかに恨みこそあったが急な話に喜びの感情はなかったが同僚の恨みを晴らす形になった。


ただ、私の手で晴らした訳では無いのは間違いない。私はモヤモヤしながら業務を始める事にした。

そして昼過ぎ頃。


再び部長が口を開く。

「〇〇君の懲戒解雇が正式に受理された。また彼が抜けた後任人事はこれより人事部と精査し、決定する。それと××君。後で部長室に来なさい。以上。」


私が部長室に呼び出された。他の同僚達が少しざわつく。このタイミングで呼び出されたとなれば〇〇が抜けた後任の話がされるのでは無いかと思うのは当たり前だろう。


しかし私にはその気が無かった。もう既に私はこの会社を辞める腹積りがあったからだ。

〇〇が全ての元凶だとは言え、私や同僚の話に聞く耳も持たずに同僚を出向する形を取ったのは他でもないコイツら幹部なのだから。

コイツらに人を見る目は無い。どんな話を持ってきても私は辞退するつもりだ。

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ジャンケン 鯖人 サバト @sabato-bayashi

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