第3話 キャラメイク
気が付いたら照明が消えていた。
真っ暗な空間で独りぼっちだった。
だけど全く気にしないのは慣れているから。
しかし暗いと不気味だ。
夜寝るときは部屋を真っ暗にするけど、ここまで暗いと何も見えないで危ないで、周りをキョロキョロ見回した。
「これってどういうこと? 何があったんだろ」
思ったことを口にしてしまった。
すると真っ暗な部屋が急に明るくなって、白くなる。
その先で明輝を待っていたのは、蛍光グリーンのラインが入った服を着た少女だった。
「誰かいる?」
「ようこそ、『Creatures Union』の世界へ。ここは、ゲームの説明とアバターを作るお部屋だよ!」
「えっと、誰ですか?」
完全にポカンとしていた。
呆気に取られて、瞬きしてしまう。
そんな明輝を見た、謎の少女は凄いレスポンスで、話し返した。
「私ですか? 私はこのゲームのアイドル。それから貴女にゲームの説明をするためにやって来た、NPCのリナだよ」
「リナさん?」
「うんうん。でも同い年っぽいし、リナでいいよ。あっ、この世界のNPCたちはみーんなが私みたいに、本当に生きてる人みたいに過ごしてるんだよ。だからほら!」
リナは満面の笑みを浮かべた。
アイドルスマイルだ。
しかしその作りは見事で、素晴らしいほど。本当にここはゲームの中なのかと、疑ってしまうほどだった。
「ほらほら、早くこっち来てよ」
「その前に、私は明輝です。よろしくね、リナ」
自己紹介は忘れない。
しかしリナはそんな思いもよらない行動に、唖然となり、クスッと笑ってしまう。
「ぷぷっ。貴女面白いね。オッケーオッケー、明輝ね。もしかして、こういうゲームをやるの初めてだったりする?」
「う、うん。ゲームとかそんなにやらないから」
「そっかー。じゃあ、いっちょ楽しんじゃおうか! この世界はとっても自由なんだよ。きっと気に入ってもらえるよ!」
リナは嬉しそうに話していた。
女子高生。モデルがそのくらいで、同年代のこと話すとテンションが上がる。
そんな何も知らずに、ただ純粋に楽しんでくれそうな子は大歓迎だ。
「それじゃあまず設定は終わってるかな?」
「あっ、それは一応ね」
最初にケースを取り出して、ダウンロードしている間にペタペタ体を触っておいた。
それから保険証から情報を入力して、DNAも採られた。
このドライブはネットワークに直接アクセスできて、しかも充電もいらない。そんな最新機種だった。お金もかからないんだよね、ネットをいくら使っても。凄い時代だよ。
「それじゃあゲームの経験は……あんまりないんだっけ?」
「う、うん」
「大丈夫だよ。そうだなー、まずはこの世界の説明を簡単にするね。この世界には色んな種族の人達が暮らしている。プレイヤーはそんなたくさんの種族から一つを選択して、アバターを作るんだ」
「アバター?」
「後で説明するから、一緒に作ろうね。でもほとんどそのままだよ」
如何やらリナは楽しそう。
それから話は饒舌になって、この世界の説明を続けた。
「プレイヤーは広大な世界を自由自在に駆け巡ることができる。けれど最大の魅力はそこじゃない。プレイヤーが選んだアバターにはたくさんの種族があるんだけど、なんとその力を駆使することで、自分も化物になれるんだ。それこそ、クリーチャー」
「く、クリーチャー?」
目を丸くした。そう言えばタイトルにもなっていたっけ。
でもクリーチャーの力を使うってどういうことだろ。
楽しそうだけど、私は何か嫌だな。
密かにそう思ってしまった。
「それじゃあキャラを作りましょう!」
「キャラってどうやって作るの? その、アバターってやつ」
するとリナは指を鳴らす。
いい音だった。目の前に大きな鏡が出てきて、映し出す。
汚れも一つなくて、驚いた。
「これは何?」
「これが種族判定の鏡だよ。さぁ、強く念じてみて!」
明輝はリナに言われて、一応念じてみる。
すると鏡が光り出して、自分を映した。
だけどそこにいたのは少し違う。耳が長い女の子だった。
「な、なにこれ!?」
「上手くいったね。えーっと、スクロールバーを下ろしてみてよ!」
リナに言われてスクロールバーを下に下ろしてみた。
すると結構光ってる。
この光っているのが、選べるキャラみたいだ。
「凄い、いっぱい選べるよ!」
「明輝が純粋だからだよ。でもでもこんなに選べるのは、珍しいね。もしかして全キャラ?」
それって凄いのかな。
でもそれって選べないキャラもあるってことだよね。かなり幸運だ。
だけど嬉しくないこともある。
それもこれも、何だか絶妙に肌に合わなくて、嫌いだった。
「うーん、これは嫌だなー。これも、それも、うーん」
「ゆっくり考えたらいいよ」
「そうするね。うーん、あっ!」
いいキャラを見つけた。
もうこれしかない。そう思い、私が選択したキャラ。
その種族を見たリナは、驚いてしまった。
「こ、これを選ぶの!」
「うん。一番よさそうだからね」
大きく言えばそれだけだった。
しかしリナは私が選んだキャラを見て、絶句する。
そこに映っていたのはリナをあたふたさせるほどのインパクトがあるとは思えないほど普通のキャラ。《ヒューマン》だった。
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