第2話 宅配の中身は?

 次の日。

 明輝は今日の最後の授業が終わり、タブレット端末をリュックの中に詰め込んだ。

 今の時代、タブレット端末で授業をする。

 教科書は重たいから、年々減っているらしい。あんなに分厚かったのにね。


「明輝! もう帰るのー?」

「うん。烈火は部活?」

「まぁねー。一か月後に新人戦あるからさ、頑張んないと」


 頑張るって、どれだけやるんだろ。

 こう見えて烈火は、中学の頃全国一位だった。

 でも本人は楽しそうにやっているから、きっと面白いんだろうね。

 よく筋トレ付き合ってたよ。

 そのせいで握力が結構上がったっけ。


「でもさ、私もゲームしたいんだよね」

「ゲーム?」

「うん。スポーツも楽しいけど、やっぱり時代はVRGAMEだよね!」

「VR……筐体じゃなくて?」

「それは古いよ。今も好きな人いるけどさー」


 烈火は昔からゲーム好きだ。

 体を動かす方が流石に性に合っているみたいだけど、VRGAMEは、その名の通り、実際にゲームの中にいるみたいな感覚になれるらしい。

 実際は動いていないのに、意識だけがゲームの中の世界で過ごす。

 そうすれば、脳波によってまるで実際の世界みたいに感じられるらしい。


 烈火が特に食いついたのは、


「最近は『Creatures Union』って新作のVRMMOが人気らしいんだよね」

「『Creatures Union』? なにそれ」

「えっ、知らないの!」


 烈火は詰め寄った。

 そんなに有名だったんだ。

 明輝は、VRGAMEなんてやったことない。

 だから何も知らなかった。


「そっかぁー。ちょっと調べてみたらいいよ。私、部活行かないといけないから」

「うん。調べてみるね。えーっと、くりいちゃあナンタラ」

「『Creatures Union』だよ。じゃ、またねー」


 烈火はテニス部の部室に行ってしまった。

 今日も一人で帰ることになるのは確定だ。

 はい、ボッチになりました。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 家に帰ると、宅配便のトラックが停まっていた。

 しかも明輝の家の前だ。

 玄関先を見やると、そこには宅配の人がいた。


「ずっとチャイム鳴らしてる。あのー、うちに届け物ですか?」

「立花さんですか。こちらにサインをいただけますか?」

「わかりました」


 ボールペンを受け取り、名前を書いた。

 宅配便の男性は、サインを受け取り、明輝にダンボール箱を渡す。

 そこまで重たくない。

 すぐにトラックに乗って行ってしまい、明輝は家の鍵を開けて、引き戸のドアを開けて家の中に入った。



 明輝はリビングにある木製のテーブルの上に、ダンボール箱を置いた。

 かなり小さめだ。

 それに中身も軽い。


「一体誰宛? それに誰からこんなもの……送り主は……エルネットコーポレーション? どこ」


 スマホで調べることにした。

 するとVRドライブとかを作っていたりネットワークの制御を行っている会社で、世界中に支社がある大企業だった。

 しかし社長は誰か分かっていない謎の会社だ。


 だけど信頼は折り紙付きで、今あるほとんどのVRドライブ搭載型端末やAI搭載モデルはこの会社がシェアを席巻しているらしい。

 知らないけど。

 興味ないから。


「しかも私宛だ。何で私に……」


 とりあえず開けた見た。

 ハサミで真ん中のテープを裂いて、中に入っていた手書きの手紙が気になった。

 しかもかなり字が綺麗で読みやすい。達筆だ。


「えーっと、遊んでみてください。えっ!? それだけなの!」


 まさか一分だった。

 小さく切り分けられた白い紙にこの一文が、ど真ん中に小さく書かれていた。

 あまりに唐突で驚いた。

 しかし中にはプチプチで包まれた本体がある。


「遊んでみてくださいって言われても。なにか懸賞とか応募してたっけ?」


 だけどそんな記憶はない。

 プチプチで巻かれたものを剥がすと、真っ白な箱が一つとゲームのダウンロードチップが入っていた。


「これって時計? なわけないか」


 明輝は箱を開けてみた。

 すると中には青い高純度、高硬度性の液晶パネル。

 腕に取り付けると、勝手にバンドが飛び出て、使えるようになった。


「凄い。これってVRドライブだ!」


 初めて使ってみたけど、こんなにぴったりで違和感がないなんて驚きだ。

 それにこのゲーム。

 確か、烈火が言っていたやつだ。


「『Creatures Union』。これを遊んでねってこと?」


 首を傾げる。

 だけど面白そうなパッケージなのはかなり好印象。


「まずはいろいろ設定だよね。それからチップを入れてゲームをダウンロード。よし、これでオッケー!」


 早速遊べるようにした。

 リュックを適当に投げ出して、ソファーの上で横になると、ゲームを遊んでみることにした。

 なにも調べていないが、説明書何て読まなくても遊べる。だから何も調べなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る