第3話  宝は残っているのか

 1



 まあ、懸念というほど大それたことではない。


 誰が作ったのかはさておき、この地図はかなり古いものだと思われる。一日や二日で出せる色褪せ具合ではない。少なめに見積もっても十年は経過しているはずだ。となれば、すでに誰かがこの地図を使って宝探しをした、と考えるのは不自然なことではない。


 何が言いたいのかというと、この宝の地図が示す宝はすでにのではないか、ということ。


 源道寺家で見つかったこの地図は、おそらく何十年も前……いや、何十年は言い過ぎかもしれないが、かなりの月日が経っていることはたしかだろう。


 つまり、宝はもう誰かが見つけてしまっている可能性が高い。


 クソガキたちは意気揚々と宝探しに挑むつもりらしいが、冒険を終えた先にその肝心の宝がないのであれば、宝探しの楽しみは半減だ。


「早く行くぞ」


 眞昼が俺の手を引っ張る。


「どんな宝だろうね。朝華の家はお金持ちだから、きっと黄金だよ」


 未夜が想像を膨らませる。


「いやいや、宝の地図なんだから、伝説の剣かもよ」


 眞昼がとんでもないことを言い出す。


「剣かー、じゃあきっと山の頂上に刺さってるんだ」


 こんな期待と好奇心に満ちた雰囲気に水を差すようなことは言えないな。というか、宝の地図という非日常的なものの存在感だけが先行していて、宝の有無の可能性に気づいていないようだ。


 俺の懸念が正しいのかどうかの確証もないし、冒険モードになったこいつらを止めるすべなどない。仕方ない、やるだけやってみるか。



 2



「待て待て、お前ら。冒険に行くのは構わねぇけど、まずはどこから行くのか、段取りを決めねぇとな」


 俺は地図に目を落とし、改めて地図の内容を確認する。


 まず中央に描かれた街の中には、1、2、3、4、5と数字が割り振られている個所があった。そして、それとは別にSとGの二つの文字も見受けられる。この二つのアルファベットはしましま模様の線で結ばれており、SとGの間には二つの☆がある。


「ねぇねぇ、勇にぃ、これはなんて書いてあるんですか?」


 そして左下にある文言。漢字で書かれているので読めなかったのだろう。俺は読み上げてやる。


「『五つの地を巡り、其の名を記せ さすれば宝への道は開かれん』、だとよ」


「わぁ」

「わぁ」

「わぁ」


「ってことは、この数字を1から順番に行けばいいんだね」


 未夜が今言ったように、この1から5までの数字が示す場所を巡るのが目的のようだ。そしてそれらの場所の地名を調べることが宝探しのヒントになるのだろう。


「……」


 だが、そうなるとこの、しましま模様によって結ばれたSとGはどう考えればよいのだろうか。

 地図の表記的に考えて、このしましま模様は線路を表していると思われる。Sの位置に該当する駅がスタート地点で、ゴール地点がGの駅、と考えるのが妥当か。


 だがこの線路は『五つの地を巡り~』の部分とはなんの関係もない。


「ふむ」


 意味のないことを書き記すわけがないから、この線路も宝探しに関係してくるはず……

 この謎を解かなくては宝にはありつけないのか。俺もちょっと楽しくなってきたぞ。


 ただ一つだけ引っかかることがある。というのも、この地図上に記された五つの場所。わざわざ出向かなくても、この辺りの地区名は~だ、とおおよその地名は分かるものだが……


 どういう意図なのだろう。



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