メイディアンナズーカラデ
ぐりず
双子の兄弟
拝啓
ドマーティとカティアンド。よくこの手紙を読んでくれた、ありがとう。
お前達が九つになる頃にこの手紙をナズーカラデからお前達の所へ届ける。手紙を見たあとは是非とも俺に会いに来て欲しい。
愛している息子達へ
敬具
偉大なる職人・ギルドラからの手紙。その手紙を貰った双子の兄弟は幸か不幸か。延々と縛られ続ける旅に出る。
最愛の父に出会うために。どれだけ呪われようとしても。
***
ボク達は幸せものだった。ずっと会いたかった、会いたくてたまらなかった父からの手紙。それが昨日届けられたんだ。
弟のカティと一緒に手紙の内容を見るとなんとずっと気になっていたナズーカラデに来いだって!
どうしよう、嬉しすぎて笑いが止まらない。
「ドマ、またニヤニヤして。気持ち悪いよ」
「直球だね!?カティは嬉しくないの?」
なんやかんや言ってるけどカティも嬉しいに違いない。昔から父がどんな人かボクにずっと尋ねていたからだ。
「……僕だって嬉しいよ。でもドマは騒ぎすぎ。ちょっとクールダウンしにおいでよ」
「やだ!!クールダウンという名の閉め出しでしょ!?!?!?」
こう見えてもボク達は仲良し兄弟。
手紙が来たからには早速いつ出発するか予定を立てないと。ま、立ててあるけどね!
「それは冗談として。いつ出発するつもり?ゆっくりで良くないかな」
「え?明日だよカティ」
「正気?」
「うん」
物事は早めに行動しないと。カティは何故か困惑してるけど…だってナズーカラデはずっと行きたかった場所だし、しかもずっと会いたかった父まで居るんだ。このワクワクを放置してたらもったいないよ。
「えぇ…明日行くって準備はどうするの?」
「今から速攻で終わらせるよ〜!」
「はぁ。行動力の塊だな…」
まずは周りの人達に言わないと。親無しのボク達を育ててくれたから今までありがとうって。
「来週にしなさい」
「ええええええええええええええ!?!?」
「だから言ったじゃん…」
今まで育ててくれたテチルさんに話したら一瞬で明日はダメって言われてしまった。
そんなぁ…テチルさん、いつもボクのわがままを聞いてくれたのに………なんで?
「ねー!テチルさん!何で?」
「後で話す」
「今話してよぉ!!!」
「ドマ!すみませんテチルさん…」
カティに力で抑えられながらやむを得ず家に帰った。
テチルさん、話すならすぐに話してよ!
「じゃあボクはドマと帰ります。突然すみませんテチルさん」
「ん。また明日、ちゃんと話すから待ってろ」
「はい、わざわざありがとうございます」
「………ふぅ。やっとドマ落ち着いた」
「うん、カティのキスは落ち着くからねぇ。」
「あくまでもほっぺだからね。落ち着かせる試し」
カティのおかげで少し落ち着いた。確かに知識ゼロなのに行ったことない場所に行くのはまずい。
もしかしたら死んじゃうかもしれないし…うんそれだけは嫌だな。
「テチルさんが教えてくれるまでちゃんと待と」
「そうだね。ナズーカラデの魅力はよく聞くけど危険な事はあまり聞かないから、ちゃんと言う事聞かないと大変なことになっちゃうね」
「うんうん」
明日テチルさんが危険なことについて話してくれるけど、ナズーカラデってどんなところが危険なんだろう。
ナズーカラデの別名が…忘れたけど…明るい意味だった気がするから危険は少ないと思うんだけどなぁ。
「とりあえずもう夜だし寝よう。おやすみ、ドマ」
「おやすみなさいカティ」
***
「というわけで、今日はよろしくお願いします!!!」
「よろしくお願いします」
「おう、それじゃあお前らが目指してるナズーカラデの危険性を教えるからよく聞けよ」
テチルさんは紙とペンを持って図を描き始める。洞窟みたいな…大きい穴が空いている。
もしやこれが…
「よし描けたぞ。絵なんか久々に描くから上手く描けてるかわからんが…見ろ、これがお前らの目指すナズーカラデだ」
これが、ナズーカラデ…!!!こんな感じなんだ!でも洞窟って何だか怖いな。危険な生き物とか居そうだし…
「別名・救いの洞窟さ」
「なるほど…危険そうには感じませんが、どのような所が危険なんでしょうか?」
「まずは凶暴な先住生き物がいる事だな。そいつらに襲われたら大怪我不可避だ…あと、その怪我はとある条件を踏んでしまうとさらに悪化してしまう」
「とある条件って?」
尋ねた途端テチルさんは口を閉じた。言えない秘密なのか、それともボク達を思ってなのか…
「て、テチルさん?」
「……誰かを救う事で、救った分負傷が激しくなる。だから二人で目指すのはやめた方がいいと言われているんだ。お前達の夢を壊すようで悪いが、本当のことだ」
救った分、負傷が激しくなる……?
「要するに…僕が何かあったらドマを救ったあと生物に襲われたら……」
「うむ。負傷が激しくなり身体的の怪我や精神的な怪我を負ってしまい最悪の場合死だ。ったく何であいつは愛息子達に危険な目に合わせるんだか…」
とんでもない事実だ。なのに行く気は無くならずにもっと行きたくなる…呪われてるのかな…
「ひっ…」
「カティ、大丈夫だよ。ボク達なら何とかなるって!テチルさん教えてくれてありがとう」
「…本当に行く気か?」
「うん…」
「…………なら行ってこい。応援してる」
テチルさんはその言葉を最後に家から出ていった。寂しそうな背中だった。
「ドマ!カティ!お前らナズーカラデに行くってホントか!?」
「もちろん!ね、カティ?」
「うん」
「まさか本当に行くとは…」
幼なじみのカリードとヨミルザが急に家に押しかけて来て凄まじい勢いで尋ねてくる。その勢いに圧倒されながら答えていくのはすごい労力がいる
…
二人とも昔から元気だからな……
「マジかー!頑張れよ!!お前らのお父さんに会えるんだろ!?」
「そうなんだよね。お父さんに会いたいから」
「オレたち応援してるぞ」
「ありがとう!」
出発は来週。それまでに準備とか色々と終わらせないと…!!
***
「……息子達、本当に来るのだろうか。どう思うか?ミーニアナ」
男は今存在しない女に静かに話しかけた。返事はないはずなのに聞こえるような気がする。
『………あの子達は私なんですから、絶対たどりつけますよ』
「そうだよな。ドマとカティはお前だもんな」
幻聴を聞いて静かに答える男____ギルドラは期待を胸に抱き二人を待った。
メイディアンナズーカラデ ぐりず @gurguri
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