花守たちの遊び
実の態度から、彼がユーリを見捨てる気がないことを察したのだろう。
精霊の少女は一度しかめっ面をして、すぐに表情を苦笑に変えた。
「まったく、優しいんだから。んじゃあ、ルール説明しまーす!」
飛び抜けに明るく宣言した彼女は、パンパンと両手を叩く。
すると―――
「ようやくお呼びだぁ!」
彼女の後ろに、もう一人の精霊が現れる。
「待ちくたびれたよー。」
さらにもう一人。
「この遊びも、久しぶりなもんだね。」
そしてまた一人。
「じゃじゃーん!」
「待て待て待て! 一体何人出てくるつもりなの!?」
五人目が現れ、実はたまらずそう突っ込んだ。
「これで全員! 私たち、
五人並んだ精霊たちは、まるで子供のように大袈裟な仕草で胸を反らす。
「はな……もり…?」
聞いたことがない単語だ。
この地域独特の役割だろうか。
「私たちは花守として、それぞれの花の特別な力を享受しているんだ。私たちの力の波動が、他の精霊たちとは少し違うことが分かるかなぁー?」
どうやら、こちらの疑問を解消する隙は与えてもらえなさそうだ。
仕方なく、実は目を閉じて意識を集中させた。
「うん……確かに、普通の精霊じゃないことは分かる。……あれ? もしかして、君たち個人も微妙に力の質が違う…?」
「おおー、正解でーす。さすが実だね。」
実の指摘に、精霊たちは感心したように拍手をした。
「私たちはそれぞれ別の花から力を受けてるから、力の波動がちょっとずつ違うのね。そして私たちは、守る花とおんなじ名前を主様にもらったんだよ。私の名前はペリティール。」
五人の精霊たちを代表して、これまでずっと実と話してきた精霊が自慢げに自分の名を告げる。
「自分はルコラス!」
「ミストットだよ!」
「ククルル。」
「ジャージーちゃんでーす。」
ペリティールに続き、後から現れた精霊たちが次々に自己紹介をしてくる。
「なるほど。」
はしゃいだ様子の精霊たちの髪で揺れる色違いの髪飾りと彼女たちが身につけている
互いに区別をつけない精霊にしては、やけに個性的な見た目だと思っていたのだ。
だが、こういう事情があったのだと知れば納得がいく。
あえて見た目に特徴を加えることで、彼女たちはそれぞれが守る領域を視覚的に表現したのだろう。
あるいは、自分たちが他の精霊たちより格が上だということを強調したかったのかもしれない。
彼女たちの髪飾りと袴の色は、守る花の色を模したといったところか。
「あ…」
それでふと、最初のお堂で聞いた話を思い出した。
「精霊の花畑…?」
確か、この山にはそんな場所が存在するという
「なあんだ、このお山の言い伝えは知ってるんだ。なら、話は簡単だね!」
実の呟きを聞いたペリティールは、わくわくしてたまらないとでもいうように表情を明るくした。
「じゃあ、まずはこれをあげる。」
ペリティールはルコラスを引き寄せて彼女の髪に挿されていた髪飾りを取り、それを実の手に落とした。
「さて! これから実には、この山にある花畑を順番どおりに探して回ってもらいまーす。それぞれの花畑には私たちが一人ずついるから、上手く私たちの力を見分けてきてね! 今あげたのは、私たちを見つけるためのヒントでーす。順番を間違えずにちゃんと全員に会えたら、主様とエリオスがいるとこに繋がる道を開けてあげる。じゃあ、頑張ってねー!!」
「あっ、ちょっと!!」
言うや否や笑いながら離れていく精霊たちを、実は慌てて呼び止める。
「ちょっと待って! 説明が思いっきり足りないんだけど!? 順番どおりって、一体どういう意味なのさ!?」
「お山のお導きのままに~♪」
大声を張るも
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