放たれる一撃



「―――っ!?」





 突如自分の身を襲った異変。

 ユーリは思わず、頭を抱えた。



 ――― 義務ヲ、果タサナケレバ



 思考がそれで埋まる。

 何が起こったのかを考える間もなく、頭にやっていた手が勝手に動き出した。



 違う。

 これは、自分の意志じゃない。



 必死に体を止めようとしても、体は滑らかに自分の意志に反した動きをする。



「―――っ!!」



 ゆっくりと弓に矢をつがえる自分の両手。

 その矢がまっすぐに狙った対象に、全身が総毛立った。



 嫌だ。

 こんなことしたくない。

 逃げてくれ。



 叫びたいのに、声さえも出せない。

 頭の中がぐちゃぐちゃになって、気が狂いそうだ。



 ――― コレデイイ



 違う、違うんだ。



 ――― コレガ義務ダカラ



 違う。

 そんなことない。



 ――― 殺セ、殺スンダ



 嫌だ。嫌だ。――― 嫌だ!!




「―――――― 実、けろ!!」




「!?」



 五人ほどをまとめて相手取っていた実が、反射的に振り返ってくる。



 しかし、時すでに遅く―――


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る