待っていたのは―――
「じゃあ、この道をまっすぐ進んでね。」
見えてきたのは、そこそこに広そうなログハウスだった。
「………?」
実は首を
玄関前のデッキを囲む柵に腰かけている誰かが見える。
あれが、山の
うなじ辺りまである鮮やかな白い髪の中で、左側のこめかみ近くの一房だけが藍色をしているのが印象的だ。
他の部分よりも長く伸ばされた藍色の部分は三つ編みに編まれて、彼の耳の前に流れている。
垂れ目で眠たそうに伏せられた金茶色の瞳からは特に感情らしい感情が感じられず、近付いてくるこちらには一切興味がないとでもいう風に見えた。
見た目の年の頃は、ユーリと同じくらいだろうか。
「あらら。」
実たちが玄関に続く階段前で足を止めると、彼はどこかつまらなさそうに息をついた。
「なあんだ。ゴールしちゃったんだね。賭けはエリオスに負けちゃったな……」
「―――っ!? 父さんは!?」
彼が何者かと疑問を投げつけるよりも前に、彼の口から出た名前に飛びつく実。
「ん? さっきまでいたけど?」
彼は柵からデッキに降り、玄関を開けて中を覗き込む。
「おーい、エリオスー?」
彼が中に向けて呼びかけるが、それに応える声はない。
「……ったく。逃げたな。」
根気強く何度も呼びかけていた彼だったが、やがて諦めたように溜め息を吐いて髪を掻き回す。
「いや…。別に、いないならいいんです。……想像どおりなんで。」
どうせ、こんなことだろうとは思っていたのだ。
落胆しながらも、それを遥かに上回る安堵を覚えてしまい、実は複雑そうに唇を噛んだ。
彼はそんな実を眺め、ふと眉をひそめる。
「物分かりがよすぎるのも、考えものだね。ずっと見てたけど、君が人間の世界で気楽にやっていけるのか心配だよ。」
「え…?」
実はきょとんとする。
ずっと見ていた。
そう言うということは、やはり……
「まあ、それは僕の個人的な見解だからいいとして。立ち話もなんだし、上がりなよ。疲れたでしょ?」
実が何かを言う前に、彼は開けたままのドアの奥を指し示した。
確かに彼が言うとおり、疲労はもう限界に近い。
休息が取れるなら、それに越したことはないが。
「………」
実はユーリと顔を見合わせ、無言のやり取りを交わす。
結果、素直に彼の提案を受け入れることにした。
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