思案する緑

 特定の力を見分ける作業も、さすがに三回目ともなると慣れてくる。



 何度か協力を申し出ようとしたユーリをその度に受け流したが、そんな状況でも一時間ばかりで次の花畑に到着することができた。



「ふむ、コツを掴むのが早いねぇ。」



 そんな感想を零しながら出迎えてきたククルルと物々交換をしながら、実はまじまじと彼女を見つめていた。



 ルコラスやミストットと違い、彼女はこちらと必要以上の会話をしようとしない。



「ねぇ、一つ訊いてもいい?」

「手短に済むことなら。」



 ククルルは、こちらを見ないままそう答える。

 随分とドライな対応だったが、それが逆に安心できた。



 彼女なら、必要最低限の会話でこちらの疑問に答えてくれそうだ。



「今さらな質問なんだけど、なんでこんなことする必要があるの?」



「さあね。ぼくは人間の事情とか、心底興味ないから。さっさとゴールして、エリオスたちに訊けばいいんじゃない?」



「えっ…」



 ククルルの言葉に、実は目を見開く。



「父さん、まだここにいるの?」



「さっきぬし様の所に行った時には、まだいたよ。何をそんなに驚くのさ。実はなんのために、お山の試練に挑戦してるわけ?」



 いぶかしげなククルル。



「いや、どうせもういないんだろうなって思ってて……」



 確かに父に会うためにこの島に来たのだが、どうせ会えないだろうと期待していなかったのも本心だ。



 だが―――



「そっか……まだいるんだ……」



 ぼんやりと呟く実。



 父に会うと思うと、色々と複雑ではある。



 訊かなければいけないことは山ほどあるし、父の口から語られることがいいことばかりではないことも想像がつく。



 それでも、ずっと会えなかった父と会えることには、やはり嬉しい気持ちもあって。



 実は思わず、くすくすと笑った。



「子供か。」



 一人でテンションを上げている実を横目に見ていたユーリは、やれやれと呆れた息を吐いた。



「なんだよ、別にいいじゃん。」



 実は軽く頬を膨らませ、次に無邪気に破顔した。



「もう何年も、まともに顔も合わせてないんだ。ちょっとくらいはしゃいだって、悪いことはないでしょ?」



 純な表情で笑う実。

 それを見たユーリは言葉を失ってしまう。



 そんな二人の様子を見ながら……



「ふーん……」



 ククルルは一人、意味ありげに呟いていた。


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