同士討ち


 古城を囲む鬱蒼とした森のフィールドに続々とPCが集まってくる。第二番ドゥーリがそれらを蹴散らしていく。

「ハッ! いいじゃねぇの人外獣理! ご機嫌だぜ!」

 すると遠くに第一番と第六番の姿を目撃する。ドゥーリはそこに向かい跳躍する。腕を使って地面を叩く事によって。その土煙は天高く上った。

「よお! 御同輩!」

「うわ、あなたは――」

「獣王に逆らって即潰されてた奴ね」

「上等、殺される準備は出来てるみたいだな」

 殺気が満ちる。第一番の多重加速バフはかかったままだ。そのまま逃げようとして第二番の攻撃によって阻まれる。

「破壊腕・一式」

 森の木々をへし折り、直線状の全てをすり潰す腕力による風圧。これが第二番のSTR超強化。思わず息を飲む。アレに巻き込まれたらタダじゃすまない。

「俺達のPC権限は失われてない。俺達にだってレイドイベントに参加者側として居る権利はあるはずだ」

「なにを……言って……」

「狩らせろよ、お前らを。そしたらいいスコアになるだろうが」

「嫌だわ、これだから脳筋は」

「お前から潰す」

 すると第六番が面倒くさそうに詠唱をする。パッと見ではなにが変わったかわからない。しかし。

「破壊渦!」

 腕の動きだけで風圧を操り竜巻を引き起こすドゥーリ。対する第六番はそれを受け入れた。HPゲージはゴリゴリ削られていく。そして零になり、満タンに戻った。

「あ?」

「生命の理、私は残機性の加護を得た、残りHPが十万はあると思ってちょうだい?」

「上等上等! 削り切ってやらぁ!」

 そこで第一番アンは動く、多重加速バフによる高速移動、第六番を抱え、その場から逃げ出す。咄嗟の事にドゥーリの反応が遅れる。道を塞ごうとした時にはもう目視の範囲外に二人は居た。

「ふざけんなぁぁぁ!!」

 一際大きい土煙が宙を舞った。


 ――残り二十時間。

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