一人の視点


 人外獣理world3「古城の森」にて。

 レイドイベント開催中!

 七体の特別な人狼を狩ろう!


「なにが狩ろう! だよ……百パーティでかかっても敵わないなんて聞いてないぞ……」


 攻略班の一人だった彼は第三番と第四番にぶつかった。空から落とされ、海に沈められ、その後、第五番の強力な毒にやられ今苦しんでいる。HPゲージがゴリゴリ削られていく、普通の毒ダメージではない、解毒も出来ない。大量の毒アイコンが画面を視界を埋め尽くす。


「死ぬのか……俺は……」


 こうして一人のPCがロストした。いや何十、何百のPCが既にロストしている。運営には問い合わせが殺到し、会社の通信回線がパンクしたとかしないとか。それでも落ちないゲームサーバー。

 攻略Wikiのコメント欄が阿鼻叫喚になり、そもそも攻略Wikiが更新されず。SNSは炎上に次ぐ炎上でお祭り騒ぎ。先ほどロストしたPCがヘッドギアを外す。現実に帰ると、そこには殺風景な部屋があった。


「獣の、理。そうか、分かったぞ……」


 そう言って彼は持論を匿名掲示板に書き込んでいく。それは波及し、レイドイベントの真の意味を知らしめるのだった。

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