第41話 魔獣少女の油断

『スカディだと!? あのヤロウ、どこにいやがる!?』


 バロール先輩が、興奮している。


 だが、一向に姿を見せない。


「さあ、巫女様をお迎えするために、人間性おしりを捧げなさい!」


 なんと、ヘビの巫女が司令を下すと、祭りに来ていたみんながお尻をまくり上げ始めた。


「あの人、氷皇ひょうおうの!」


 臨也さんが、櫓の上にいるロリ巫女を指差す。


 氷皇という学校名には聞き覚えが。なんだっけ?


「以前、あなたの弟さんとサッカーで戦った学校が、氷皇の中等部ですわ。また、あの試合を邪魔したのも氷皇高等部の生徒です」


 イヴキさんの言葉で、ようやく思い出す。


「おや? お尻を差し出さぬ不敬の輩がいますね」


 櫓の上から、ロリ巫女がこちらを見下ろした。


「あなた、氷皇の生徒よね?」

「いかにも。私は氷皇ひょうおう高校所属、生徒会副会長、池尻イケジリです。巫女を愛さぬ不届き者は、尻でお逝きなさい! ビースト・クロス!」


 ヘビの巫女が、本性を表した。ヘビをふんどしのように穿いている、巫女の姿に変わった。


「ば、化け物!」


 臨也さんが、恐怖で足がすくんでいる。


 魔獣少女の力を持たない一般人は、魔獣少女を見ると怪物と誤認してしまうのだ。


 臨也さんは元魔獣少女であるが、わたしが彼女の力を消し去っている。


 わたしはマナさんに、「お願いします」と告げた。


璃々リリ、ここはヒトエたちに任せて逃げるぞっ! ヒトエ、いいんだな?」


 マナさんが、臨也さんとユキちゃんを連れて逃げていく。


「今です先輩、ビースト・クロス!」


 いなくなったのを確認して、こちらも変身した。


「せっかくこれだけの人数を集めて、人間の夢を食べるチャンスだったのに、邪魔が入りました。なんということをしてくれたのでしょう?」

『うるせえ! スカディを出しやがれ!』

「スカディの名を存じ上げている? はて、なんの因果をお持ちなのか、皆目わかりませんわね。とにかく人間性お尻を捧げなさい!」


 ヘビ巫女魔獣少女が、手に持っているヘビ型のムチを振り回す。


「ちいい!」


 刀を持っている手を、ムチで取られた。


 いつもなら避けられるはずの攻撃が、当たってしまう。


「落ち着いてください先輩。これでは、戦えるものも戦えません!」

『わかってるっての! けど相手が、すばしっこいんだよ!』


 明らかに、先輩は焦っていた。


「冷静になれば、とらえられます。とにかく、気持ちを落ち着かせて」


 ここでは、わたしの方がリードしないと。


「妙ですね。動きが散漫すぎる。まあいいでしょう。お尻を攻めれば、同じこと」


 ムチが、ひとりでに伸びていく。


 わたしの装備しているミニ浴衣の中に、ムチの先端が入っていった。


「ダメダメダメ!」

「そんなに身体をよじってもムダです。このムチは、あなたのお尻を的確にとらえます」


 このままでは。


 まずいと思った瞬間、ムチが炎にまみれて焼き切れた。


「魔獣少女は、一人ではありませんわ」


 イヴキさんが、サマエルの力を得た魔獣少女となっている。

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