第10話 魔獣少女ピンチ! くんずほぐれつ殺法!

 わたしは抜刀し、キメラを迎え撃つ。


「ケケ!」


 カラス型魔獣少女が、急降下してくる。


「ぐっ!」


 爪によって、わたしの腕がわずかに切られた。すぐに回復はするが、痛みは消えない。


「反応できそうにないか、ヒトエ?」

「空を飛ぶタイプって、初めてなので」


 海から来るタイプはいたが、空中からの攻撃は今まで受けたことがない。


「どおお!」


 ヤギ型が、わたしに突進してきた。


「ヒトエ、これはミノタウロス戦と同じ戦法で行けそうだ」

「はい!」


 過去に、ミノタウロス型の魔獣少女と戦った時である。スカートを闘牛のマント代わりにして、わたしは戦局を乗り越えた。今回もいけるか?


 スカートを翻し、攻撃を捌いていく。いけそうだ。これで――。


「ゲロゲロ!」


 ヤギ型におぶさっていたカエル型が大きく口を開けた。舌を伸ばし、わたしのスカートにからみつく。


「しまった!」


 スカートが、持っていかれてしまう。わたしが、逆にピンチに。


「舌を切り落とせ、ヒトエ!」


 とんでもないことを、バロール先輩が言い出す。


「いいんですか、先輩? 相手が死んじゃうんじゃ」

「平気だ! 魔獣少女の特性を忘れたか?」


 ケガを負うのは、あくまでも力を供給する魔物の方だ。少女にダメージは通らない。


「だったら! てい!」


 わたしは、舌を切り捨てた。


「いてええええ!」


 カエル型の舌が、引っ込む。


「どうだ。三人で一人の魔獣少女に、死角はない!」

「へん。どうだろうな!」

「なにを! ならば必殺の合体攻撃を食らうがいい!」


 キメラが、三体に分離する。三角状に、スクラムを組んだ。


「行け!」

「な!」


 カラスがわたしの両脇に、足で掴みかかった。羽交い締めの状態にされる。


「ゲロ~」


 カエルが、わたしを舐め回す。 


「みたか、これぞ我らの合体秘技、くんずほぐれつ殺法!」


 両腕の自由が聞かなくなったわたしの背後に、ヤギが密着してきた。


 下腹部が、なんか脈打っている。


 この感触は、まさか。


「さて、あんたの純潔をいただこうか!」

「ひっ!」

「ヘヘーッ! 泣き叫ぶがよい! あたしらは強気な女が無力感に苛まれて泣き出す姿が大好きなのだ!」


 こいつら、かなり性格が悪い!


 なおさら、負けるわけにはいかなくなった。


「へん、泣きわめくのは、貴様らの方だ。言っただろ。お前たちは三人集まっても二番手にすぎんと!」

「まだいうか! この状況をどう切り抜けると!?」

「もう抜けたよ!」

「何をバカ……なああ!?」


 キメラがわたしを、獣姦しようとしたときである。


 わたしは服だけになって、姿を消す。


「どこだ!?」

「ここだ!」


 下着姿のまま、わたしはゲーセンの屋上に立つ。色気のないショーツだが、仕方がない。


「肉を切らせて、骨を断つ!」

「バカが! プロテクターを外して無防備になった貴様など!」

「それはどうかな?」


 わたしは、刀をグルグルと回す。


 衣装が一本の帯となって、三体を巻き込んだ。


「くそおお!」

「トドメだ! 邪眼・一文字斬りぃ!」


 三人まとめて、刀からの衝撃波で切り捨てる。魔獣少女との関係性を断った。


「ケケー!」


 しかし、カラスの魔獣少女だけが逃げてしまった。


「一匹逃したか」

「でも、街は救いましたね」


 わたしは、変身を解く。


「なあ、来栖くるす?」


 しまった。心配事はもうひとつ。御堂さんに、変身を見られてしまったのだ。


「人違いです。さっきの人は帰っていきました。わたしは関係ないです」


 どうにか、ごまかそうとする。


「いや、あんたがやってくれたってことくらい、あたしにはわかるよ」


 これは、変身バレは避けられそうにない。


「ありがとう。このことは、誰にも言わないからな」


 怖い人かと思っていたが、案外そうでもないのかもしれない。


「じゃ、じゃあわたしはこれで! ホントに人違いですから!」


 ムリだとわかっていても、わたしはごまかして立ち去る。


 どうしよう。わたしの学園生活が終わってしまう!

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