第105話 言われてやれないなら、男じゃない‼️

 「うえぇぇっ‼️知ってたのか⁉️嫁‼️」

 こう言う部分がまだまだ子供で素直なのだが、大きく反応してしまった後、自らの口を押さえるジュンケン。

 まあ、叫んでしまった以上遅いのだが。

 「え?……妊娠?……」

 想像もしていなかったのだろう、呆然とする宗近と、言うだけ言ってスッキリしたのか、その前から立ち上がったゆきが、

 「やっぱり、ジュンケンさんは知っていましたか?」と、訊く。

 こうなっては今更だ。

 「ああ。スイリョウ姉は前の結婚の時いろいろあって、流しやすいって言ってた。万一のことがあると命に関わるから、俺とゲツレイに打ち明けたんだ。」

 ありのままの告白に、驚いたのは、次は中野だ。

 珍しい、動揺した声で、

 「ええっ‼️本当ですか⁉️」と聞き返す。

 「ああ。……ってか、中野さんも知ってたの?」

 「あ、はい。

 お嬢様に、子供は日本で1人で育てるから、幕府が倒れて不安定な世の中だし、内緒で援助してくれと。」

 「はは、スイリョウ姉らしい。」

 「私は聞いた訳じゃありませんが、一応分かりますよ。同じ『女』ですから。」

 「なるほど。」

 3人の会話に、やっと衝撃から立ち直ってきたらしい宗近が割り込んだ。

 「ちょ‼️ちょっと待ってくれ‼️」

 「?」

 「何で当事者の私だけ知らないんだ⁉️」

 それは当然の疑問だったが、3人プラス、知らなかった筈のスウトウまで加わり、返事がハモる。

 「頼りないからじゃない⁉️」

 「私はスイリョウさんからお話しされた訳じゃないので、一般論ですが……

 平良様、ちゃんと好きだと、愛していると伝えていますか?」

 ゆきのセリフは、照れ屋の旦那にも効いているが、それはさておき。

 ジュンケンは、聞いた通りにしか言えない。

 「俺は、宗近は藩のこととかやらなきゃいけないことが多いし、負担になれないって聞いてるよ。」

 「いや⁉️でも、大切な人のことなのに⁉️

 いくら私でも‼️」

 「藩に顔を出すのも伸ばし伸ばし。嫌なことからは逃げ回る男にどう期待を?」

 今回は従者の仮面を脱いで、言ってやるつもりらしい。

 中野の言葉に、言い返しかけた宗近が沈黙する。

 止めはスウトウだ。

 「僕はお嬢さんのことは今知ったくらいで、だから推量ですよ。」

 前置きして話し出したが、それゆえに冷静な、知識に基づく主張となる。

 「宗近さんは藩主になるのですよね?」

 「あ……」

 「ああ。」

 「確か藩主の奥さんには、それに見合う家柄が必要ですよね?別の藩のお姫様とか。」

 「あ……」

 「もし地位の無い……例えば庶民の娘さんを見初めたとして、やっと側室、それも1度家臣の養女などとして体裁を整えてからと聞いています。

 お嬢さまは他の国の人……身分制度からも外れた存在です。いくら宗近さんが認めても、どうやっても無理でしょう?

 万一男児でも産まれれば、子供だけ盗られる。違いますか?」

 ならば、彼女なら必ず身を引く。

 宗近のことは無かったこととし、自分1人で子供を育てる。

 当然の帰結だった。

 「確かに……考えなかった……」

 中野が呻き、

 「ああ、くそう……」と、悔しいが否定出来ない、宗近が唇を噛んだ。

 笑ってくれた、茶目っ気溢れる表情を思い出す。

 いつか惹かれていた人を思う。

 「なら‼️説得して認めさせるまでだ‼️」

 宗近が独身なのは跡継ぎになり得ない3男ゆえで、その資格を得た今、父はしょっちゅう縁談を持ってくる。

 スウトウが予見した未来が広がりかける現実を、ひっくり返す‼️

 まだ酒が残っていたのか?

 「行くぞ‼️中野‼️」と、夜間藩に向かおうとして、

 「落ち着いて下さい‼️そんなだから頼られないんですよ‼️」

 今夜だけ、従者モードは屑入れに捨てた、中野に止めを刺されていた。


 「明日には戻って来るつもりですが、説得が難航したら遅れます。皆さん、待っていて下さいよ‼️」

 翌朝、大騒ぎで藩に戻る宗近と中野を見送り……

 「じゃ、俺らも行くか?」

 「はい。」

 「行こう。」

 ゆきの生まれ故郷の村に向かって。

 3人の旅は続くのだ。




 タイトルがセクハラですが……

 申し訳ございませんm(_ _)m



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