第87話 妊娠しました(〃´∪`〃)ゞ

 「子供出来た」と言ったのは、意外にもスイリョウ。

 いや、ゆきなら分かる。

 現代と違い法的裏付けはないものの、スウトウと事実婚状態だ。

 結果として妊娠する、これは分かる。

 でも、スイリョウは……

 まずいでしょう?


 ……


 ………


 …………


 たっぷり3分固まった後、

 「うえぇぇぇっ‼何で‼誰とぉ?」

 「どういうことぉ‼」

 珍しい、ゲツレイまで我を忘れている。

 パニック状態の年少2人組を宥めるスイリョウ。

 「わぁ‼待って待って、2人共。落ち着いて。

 一応親父がいないタイミングで話してはいるけど……」

 自分の口元に指を当てて『シィ』とやると、

 「‼」

 「‼」

 ジュンケンとゲツレイは、2人同時に日光の『言わざる』の姿勢になった。

 こういう仕草がまだまだ可愛い。

 夕食後、2人はスイリョウの部屋に呼ばれた。

 大使は宴会があると出かけ、スウトウはお供。ゆきは1階で片付け物をしている。

 「一応ゆきに聞かせるのは『あり』だけど、真面目過ぎて負担になりそうだから」と、スイリョウは頭を掻いて見せた。

 少し落ち着いたジュンケンが、

 「でもさ。」

 「?」

 「その、……誰と?」と訊く。

 「いや、あたしはあまり外出してないし、なら大体絞れるでしょう?」

 言われて考える。

 大使は……親子なんだから『なし』。

 スウトウは……嫁に夢中なんだから『なし』だ。

 チラリ、自分を見るゲツレイに気付く。

 「俺じゃないぞ。」

 「知ってるよ、馬鹿だな。」

 当然というか、ジュンケンは除外。

 なら?

 「え?誰?」と真面目に分からないジュンケンは男性で、

 「宗近さんですね」と、想像がついたゲツレイは、精神的に幼いながらもやっぱり女性ということか?

 ため息交じりの正解に、

 「そう‼」と、スイリョウがチョキを出した。

 いや、『ブイ‼』とかやってる場合じゃない。

 宗近は、平良四郎宗近という長ったらしい名前の藩主の跡継ぎだ。

 日本は小さな国(藩)の集合体で、言わば小国の次期主である。

 生まれた国も違う、立場も違う。

 どう片を付けるべきか想像も出来ない。

 「で、まあ、いろいろ問題があるからさ。取り合えず2人には話しておきたい。

 いいかな?」と、珍しい真顔で言われ、

 「うん。」

 「はい」と、少年少女は頷くのだ。

 ただ、その前に1つはっきりさせたい。

 「あの、姉さん。」

 「ん?」

 「宗近さんのこと、好きなんだよね?」

 オズオズと訊いたゲツレイに、

 「あー‼そう言えば、すげえ嫌ってたよな、前は‼」と、ジュンケンも乗っかっる。

 「ああ」と、スイリョウ。

 「考えなしなところも、無神経なところも、全部嫌いだったんだけどさ。」

 「?」

 「気が付いたら裏返ってたと言うか。」

 「???」

 「なんかね。」

 照れたような言い方に、真面目なんだと理解した。

 ダメだ、これ……

 根っからの……

 『ダメンズ好きだ』と思ったものの、さすがに言わなかった2人だった。

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