ハールの選ぶ道

マリの作文を読解してー日記

 ○月○日――。


 自宅にて。

 しばらくご無沙汰してしまった。

 どうにかマリの作文を解読できたので、日記を書く。


 全く勘違いして覚えている文字が三つ。俗っぽい言葉で意味不明な部分が多数。大きさが一様でなく読みにくいこともあり、時間がかかってしまった。

 ここ数日、天気も悪くなり、雨がしとしと降る日々が続いた。

 家に誰も訪ねる人はなく、ただ窓を打つ雨音と、自分が走らせるペンの音だけを聞いて過ごした。

 でも、私には充実した時間だった。この作業は、いい気晴らしになった。

 考えても考えても、自分がどうすればいいのかわからず。しかも、怪我は治りつつあり、身の振り方を迫られているようで、何とも気が重たかった。

 マリが何を書きたかったのか考えることは、自分の行き詰まった思考を白紙に戻させたようだ。私は、少しゆとりをもって、マリのことをあれこれ考えることができた。

 あの子が何を考えているのか、どのようなことを悩み、何を喜びとしているのか――。

 間違った言葉を置き換え、空白になったところに新たに言葉を入れ、想像を駆使して作文を再構築した。

 第三者が勝手に置き換えた作文は、書いた本人の思うところとは別物になってしまう。ところが、マリの文章には、どこか訴えるものがあり、心に響いてきた。

 私は、ただ翻訳したようなものだ。

 これがマリの書きたかったことなのだろうと、読み返して信じている。


 雨はやんだ。

 祈り所の塔に虹がかかっている。

 今日こそ、ラン・ロサ様の元へ行かなければならない。

 私も、マリも、このままではいけない。

 前に進んで行くべき時がきたようだ。

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