女難の相

絶望感に苛まれてー日記

 ○月○日――


 癒しの巫女の家にて。

 とりあえず、メモ用紙に。

 時間があるので、書けることは書いておく。


 ひどい目にあった。

 昨夜、馬車でここについた時には、痛みが酷くて、あまり記憶がない。リューマの婦人に担がれて、アリアの家に入ったのは覚えている。

 そのあとは……。夢だったのか、現だったのか。

 恥ずかしいが、現だったのだろう。

 痛み止めを飲まされながら、私は泣いていたのだ。そして、弱音をたくさん吐いた。アリアにすがって、わんわん、イジイジと。


 学び舎に帰りたい。

 もう、こんなところは嫌だ。

 一人で暮らすのは、寂しくて、虚しくて、煩わしくて、耐えられない。


 朝になっても、私は追い返されることなく、アリアの家にいた。

 アリアは、私の体調がよくなるまでここに置いてくれると言った。その優しさこそ、恥ずかしい弱音を吐いたのが現実だという証拠だ。

 一人が寂しいと泣きまくったのだろう。ああ、なんて恥ずかしいことだ。

 よくなったら、すぐに帰ります……と、見栄を張ったが、見抜かれていることだろう。

 あら、そう? と言った顔に、片えくぼが出ていた。


 彼女の作ってくれた朝食は、温かくて美味しかった。

 何でもパンは固くなったら、卵をミルクで溶いた液に浸して、油で焼くといいそうだ。実際に、美味しかった。

 またまた泣きそうになった。

 これで、カチカチになったライ麦パンも食べられる。

 ラインヴェールに「休養が必要」として、一週間、仕事を休ませるように連絡してくれたのも、うれしかった。今の私には、学校に向かう気力がなかった。

 だからといって、自分から休むというのは情けなかった。今回のことは、ラインヴェールの反対を押し切って、勝手にやったことだから。


 正直に書く。

 赴任してからすぐで恥ずかしいけれど、このままやめてしまいたい気分と戦っている。だが、負けていると思う。思い浮かぶのは、再び学び舎にて神官を目指して勉学に励む自分の姿ばかりだ。

 私は精神的なストレスから胃を悪くしている。

 アリアの診断では、ストレスを除かない限り、よくならないだろうとのことだ。

 さらに、恐れていた通り、あばら骨にヒビが入っているそうだ。日常に支障はないものの、何かするたびに痛むだろうとのこと。

 これは、教師をやめる理由にはならないだろうか?


 アリアには、本当に感謝している。


 薬を飲んで一休みし、ベッドでくつろぎながら、今後のことを考える。

 アリアは、まだ、何も考えるなと言うのだけれども。

 学び舎に帰りたくても、もうその権利はない。自ら気前よく捨ててしまったのだ。

 何か、特別なことをして、神官の推薦が受けられれば別だが。それでも、神官課程に戻れるかどうか……。

 ああ、学長に大見栄を切った分、恥ずかしい。

 どうにか、学び舎に戻る方法はないものか……。

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