第四話: 次の戦いへ、狙いすまして



 ──やはり、生まれ育った牧場は気が安らぐ。




 たった数ヶ月とはいえ、懐かしさを覚えずにはいられなかった彼は、広大な緑の景色と濃厚な草木の臭いを感じ取りながら、ぼんやりと厩舎の隣にある原っぱを歩いていた。


 どうしてそこに居るのかって、それは食後の運動の為だ。


 人間だった時もそうだが、身体を休める時に重要なのはメリハリを付ける事だ。


 単純に、布団の中でダラダラと一日過ごすだけでは疲労は取れない。生き物の身体とは難儀なモノで、疲れていても最低限は動かさないと、逆に疲労が残ってしまうのだ。


 そして、それは馬となった彼とて例外ではない。いや、むしろ、馬だからこそ、動ける時は動く必要がある事を痛感していた。



 ……と、いうのも、だ。


 話は、少し前にさかのぼる。



 これは、馬になってから気付いた事であるのだが。


 その時……彼は、休んでいた。


 だって、休養の為に戻って来たわけだし、休日はちゃんと休日しないと駄目だということを彼は人間の時に痛い程学んでいた。


 なので、休みだしゴロゴロしていようかと、厩舎にてゴロンと横になっていた時に……ふと、思ったのだが。



 ……ジッと静かにしていると、どうにも身体を重く感じてしまうのだ。



 最初のうちは、彼も気付いていなかった。てっきり、馬の身体はそういうモノなのだと思っていた。


 だが、そうやってゴロゴロしているのを3日ぐらい続けた辺りで、それまで様子を見ていたスタッフたち(特に、キナコさん)からお叱りを受けてしまった。



 曰く、一日一回は外に出て歩かないと駄目だよ、とのこと。



 言われて、確かにずーっと部屋に引きこもってダラダラ過ごすのは不健康だよな、と彼は思った。


 考えてみれば、他の馬たちが毎日外に出ているのに、自分だけゴロゴロしているのも、見た目的にもよろしくない。


 気分はアレだ、特にしたい事もなくダラダラしてテレビを眺めていると、バケーションだとかで外に出ている人たちを見た時……だろうか。


 たぶん、馬の健康を考えたら、この状態のまま静かにしているのは、よろしくないのだろう。


 翌日ぐらいから、特にキナコさんから執拗に散歩のお誘いが来るなあと思っていたが……人間の時の感覚は、こういう時厄介だ。



 これに納得した彼は、よっこらしょと身体を起こした。



 すると、キナコさんたちは嬉しそうに(どことなく、笑っているようにも見えた)手綱を持って来たので、変に心配かけちゃったかな……と思ったのは、秘密である。


 そうして、あんまりゴロゴロして身体が鈍ると戻すのが大変だし、ここらで……といった感じで外に出て開放された後、軽く散歩しながら……そこで、気付いたのだ。



 ──身体から、重みが消えていたことを。



 そこで、彼は気付いた。というより、察したというのが正しいのかもしれない。



 ──馬の身体は……歩かなければ、弱るのだということを。



 人間の身体もそうだったが、どうやら馬の身体は人間以上に歩く事が重要のようだ。


 なるほど、だからアレだけ外に出るようキナコさんたちが話しかけて来たのかと、彼は遅ればせながら身を持って理解した。



(人間だって、歩く事で血流の動きを補助するって話だし、馬もそうなんだろう……いや、この巨体だからこそ、この補助が大事なのかもしれないな……)



 さて、分からないのであればともかく、身を持って理解したのであれば、面倒臭がるわけにもいかない。


 パッカパッカと、原っぱの中を歩き回る。視界の端で他の馬たちがたむろしているのが見えるが、構わず歩く。


 厩舎傍のスペースよりはるかに広いが、する事もなくひたすら歩いていると、あっという間に原っぱを走破(走っていないけど)してしまった。


 広いとはいえ、馬の身体だ。そのうえ、原っぱを囲うように設けられた柵のおかげで、気ままに外に出る事が出来ない。



 ……いや、まあ、人の心が入っている彼ならともかく、馬がパカパカ出歩いて何かあれば一大事なんてもんじゃないから、仕方ないのだけれども。



 でも、正直、散歩するぐらいならもっとぶらり遠くへ行きたいなあ……と、思わなくは無かった。



 別に、何処其処(どこそこ)へ出かけたいわけではない。


 ただ、同じ景色ばかり見ているから、たまには違う景色も眺めたいのだ。



 まあ、馬だからあまり視力は良くないけど……それでも、雰囲気というか、違いぐらいは分かる。


 馬の身体ゆえに、娯楽を楽しめない。それはもう受け入れてはいるが、人の心を持っているからこそ、気晴らしにも変化が欲しいと思うわけである。



 ……いや、馬の身も、そう悪くはないのだ。



 前世ではなかったが、ゆったりと流れる時間……駆け出すたびに体感する、己の肉体の力強さ……どれも、言葉には出来ない充実感を彼にもたらしていた。



(映画とか見ることが出来ないのは残念だけど……まあ、キナコさんたちが喜んでくれているし、それも悪くないか……)



 ただし、言い換えれば人間としての充実感を得られないことにもなるけど……そんな事を考えながら、今日も彼はパッカパッカと原っぱの中を歩いて……と? 



『ホワ~! こっち来て~!』



 ふと、名を呼ばれた。



(キナコさん? 何だろう、珍しいな……)



 声がした方に振り返れば……ぼやけて分かり難いが、厩舎方面の柵向こうよりこちらを呼ぶ、キナコさんらしき輪郭が確認出来た。



 これは、けっこう珍しい事である。



 というのも、原っぱに出されている時、しばらくはキナコより(他のスタッフも同様に)声を掛けられる事はない。


 その間に、部屋の掃除を始めとして、彼も含めて馬たちが居ては出来ない業務を行っているからだ。


 そのキナコが、わざわざ呼びに来るとは……これは向かうべきだなと判断した彼は、ちょいと小走りにキナコの下へと駆け寄り……ん? 



(なんだ? 遠目では気付かなかったけど、知らん奴もいるぞ)



 そこで、気付く。


 距離があったので臭いや音では分からなかったが、キナコの傍に、見知らぬ臭いと気配を放つ……二人の男が居た。



(誰だろう……覚えがないな)



 忘れているだけかと思って記憶を探ってみるが、やはり覚えがない。とりあえず、キナコへと視線を向ける。



『大丈夫だよ、この人たちは怖くないよ~』



 すると、その言葉と共に優しく首筋を摩られた。


 触られる指先の感触や声色からして、キナコは特にこの二人を怖がってもいないようだ。



 ……誰かは知らないが、危険な人物ではないようだ。



 そう結論を出した彼は、力を抜いて二人を見やる。


 そうすれば、二人も安心したのか、ホッと息を吐いたのを彼の馬耳は捉えていた。



『いやあ、本当に大人しい子ですね。普通、見知らぬ人が来たら警戒するものですけど……』

『ホワは、昔から大らかな子でして……幼少時に私が付きっきりで面倒を見ていたせいか、人間を全然警戒しないみたいで……』

『なるほど、そこら辺りも一応取材させてもらってもいいですか?』

『手が空いている時でしたら……』

『ありがとうございます……さて、雑談はこれぐらいにして、本題に入らせてもよろしいですか?』

『あ、はい、どうぞ』



 ──本題、とな? 



 首を傾げていると、男が何かをこちらに向けた……のだと認識してすぐに、カシャリ、と響いたシャッター音に。



(……もしかして、取材!? この人たち、記者か!?)



 思わず、ドキッと彼は心臓を高鳴らせた。


 取材……取材、取材だ。生まれて初めて、マスコミ(厳密には違うのかもしれないが)から取材を受けている。


 カシャリ、カシャリ、カシャリ。


 彼を驚かせないように、ライトは付けていないのだろう。なるほど、俺は別としても、他の奴らは驚いちゃうからなあ……と、彼は納得する。


 と、同時に……軽く焦る。


 おかげで眩しくないのはありがたいが、問題はそこではない。まさか、己が取材を受ける立場になろうとは! 



(ど、どうしよう、ちょっと緊張してきた……というか、キナコさん、取材が来るなら来ると言ってくれ! だったら食っちゃ寝せずにしていたのに!)



 さすがに数日程度で体型が変わったりしないだろうが……取材となれば、その僅かな違いも気になってしまう。


 なにせ、今の彼は、この牧場にて生まれ育ったサラブレッド。そして、現役の競走馬だ。


 ここでだらしない姿を見せていたら、この牧場にとって対外的によろしくないのでは……と、彼は思うわけであった。



(しゃ、シャワー……は、無理か! では、どうだ、たぶん、コレが一番格好よく見える角度だと思うぞ!)



 ──キリッ! 


 ──キリッ! キリッ! 


 ──キリキリキリリッ!! キリリッ! キリリッ! 



 鏡が無いので確認出来ないが、おそらくは己が一番映えると思われる角度で記者たちをチラ見する。


 人間だった時なら欠片ぐらいしか気にしなかったのに、馬になって人間の時以上に周囲の目を気にするのは……ある意味、皮肉である。


 そして……それが、こうそうする結果になったのかは、彼には分からないが。



『……はい、ありがとうございます。それでは、続きは事務所の方で宜しいでしょうか?』

『あ、はい、分かりました。それでは案内いたします。それじゃあね、ホワ、ありがとう』



 とりあえず、撮影は何事もなく終わったようだ。


 記者たちの声に落胆の色が見られず、次いで、和やかな雰囲気で談笑しながら離れて行くのを見送った彼は。



(……良かった、とりあえず無事にやり過ごせたか?)



 ひとまず、己の粗相が原因で問題が起こらなくて良かったと……安堵したのであった。






 ……。



 ……。



 …………が、この時の彼は気付いていなかった。というか、離れたので聞き留められなかった事なのだが。



『……あの、ところで、さっきの……あれって怒っています?』

『あ、いえ、アレはカメラ写りを気にしていたんだと思います』

『え?』

『あの子、のんびりしていますけど、自分が見られている事はわかるみたいで……レース前とかでも、お澄まし顔をするんですよ』

『……賢い馬ですね』

『──でしょう! でも、すっごく可愛くて! ほら、この前ここに戻って来た時も、馬連車の中でぐうぐう寝ていたらしくて』

『あ、はい』

『身体に寝癖付けて涎垂らしているのに、いざ降りる時にはキリッとお澄ましして……もう可愛いと思いませんか!?』

『あ、はい』

『他にも、あの子がシャワーを浴びている時も──でね、それがまたちょっとアホっぽいけど、でも可愛くて──』

『あ、はい』

『シャワーと言えば、あの子がまだ小さかった時の──』

『あ、はい』

『それで、ポテポテと歩いてくるのがまたとっても可愛らしくて──』

『あ、はい……』



 そんな会話が、キナコと男たちとの間に行われている事に……当然ながら、彼は全く気付いていなかった。






 ……。


 ……。


 …………そうして、更に2週間ほどの休養を得た後。



『ホワ~、げがじないでがんばっで~むりじじゃだめだよぉ~!』

(き、キナコさん……そこまで泣かなくても、ちゃんと帰ってきますから……)



 すっかり気が緩んでしまって別れを惜しむキナコがホワより引き剥がされるという、冗談のような珍事を経て……彼は、これまた見慣れたトレセンの自室へと戻って来たのであった。


 半月ちょい程度とはいえ、懐かしさを覚えるのは、それだけここでの生活に慣れたからなのだろうか。


 特に移動の疲れは感じていなかったが、感じていなかっただけで身体は疲労していたようで。


 軽く健康チェックを行った後、出された飼葉と水を平らげた彼は、そのままスタッフたちにちょっかいを掛ける事もせず、ぐうぐうと寝息を立てたのであった。



 ……とはいえ、だ。



 短期間の里帰りとはいえ、心身ともにリフレッシュの効果は果たしていたようで……寝起き直後だというのに、彼は不思議と気が引き締まる感覚を覚えた。



『ホワ、まずは軽めに身体を慣らしてゆくからな』

(お、そうだな)

『坂路は……どうだろう。短期間だし太ってはいないけど、ちょっとずつやるか?』

(いきなり坂道ダッシュやれとか言われていたら蹴りの一つは繰り出すつもりだぞ)

『でも、馬体は引き締まったままだし……ホープフルステークスを目指すなら、悠長に時間を掛けるわけにもいかないしなあ……』



 それは、彼の馬体を見つめる調教師たちにも、薄らと察せられるぐらいには……今の彼は絶好調なようであった。


 最初の頃はジロジロ身体を見られるのは気恥ずかしさを覚えたが、さすがに一日に何度も見られる日々を繰り返せば、嫌でも慣れて……ん? 



 ……。



 ……。



 …………ちょっと待て、この人たち、なんて言った? 



(ホープフル……すてー……何だって?)



 何だろう、レースの名前だろうか? 



 聞き覚えのない名前だが、それは有名なレースなのだろうか。


 それだったらやる気も湧いてくるが、称号みたいなモノだったら、ぬか喜びだ。


 いや、称号ならそれはそれで箔が付くし、牧場とかに観光客が来て結果的に賑わってくれたら万々歳だが……う~む、わからん。



(なかやま……さつき……? 何だそれは、人の名前か? 主催者の名前か? 有馬記念とかいうやつとは違うのか?)



 耳を澄ませてスタッフたちの会話を盗み聞きしてはいるが、やはりというか、会話そのものが身内に合わせたものばかり。


 つまり、業界人(あるいは、競馬に詳しい人)には分かるが、詳しくない人にはサッパリ分からないわけだ。


 だって、彼が記憶しているレースの名前なんて、ダービーか有馬記念か……後はそう、てんのう……天皇賞、ぐらいなものだ。


 なので、馬ではあるけど『詳しくない』に分類される彼も、スタッフたちの会話が理解出来ず……只々、首を傾げる事しか出来なかった。



 ──ヒヒン! 



 とりあえず、彼なりにホープフル……そうだ、ホープフルステークスとやらが何なのかを知りたくて声を掛けて見る。


 せめて、気付いてくれるならばと思って『ホープフルステークス』やら『なかやま』やら『さつき』やらが出る度にアピールしてみた……わけだが。



『ホワ~、お前を呼んだわけじゃないぞ』

『自分が呼ばれたって思っているんですかね?』

『もしくは、牧場のスタッフに中山さんとか皐月さんとか居るのかもな』

『あ~、なるほど』



(──なるほど、じゃねえよ! 全然伝わってねえじゃんか!)




 ああ、なんて歯痒いのか! 



 正直、蹴り飛ばしたい気持ちでいっぱいだったが、スタッフたちに悪気は無いのだ。


 そう思って己をなだめた彼は、ブフンと鼻息を吹いてから……緩やかに、訓練を始める。


 何時もなら彩音が背中に乗るのだが、今日は所用があって午後から……という話なので、到着するまでは他の人が背中に乗る事となった。



『……ホワは本当に、柊さんじゃないとやる気失くすよな』

(そりゃあ、美人さんだし。それに、牧場に居た時から俺に乗ってくれた人だからな、やっぱ特別だよ)



 パッカ・パッカ・パッカ・パッカ……広々としたコースを、6割程度の力でグルリと回る。牧場でもキナコちゃんを乗せて走ったが、気分としてはこっちの方が集中出来る。


 スタート兼ゴール地点には、タイムウォッチを片手に……スタッフの上司的存在である男が、真剣な眼差しと共に時間をメモしてゆく。


 たぶん、一周に掛かる時間を計っているのだろう……と、彼は思う。いや、どちらかといえば、俺の速度か……彼は、ブフンと鼻息を吹く。



 走る速度は、その都度違う。



 一回目より速くなったかと思えば、その次は遅くなる。あるいは右に左に、騎手の指示を教え込むかのように、これまで練習で教えられてきたことを再度教えられる。


 ……平均的な馬の知能が如何ほどかは知らないが、人間でも間を置くと細かい事を忘れるのだ。馬なら、なおさらだろう。


 なので、促されるがまま指示に従い続けて……いると。



『──すみません、遅くなりました』

(おっ、彩音さん! 待っていましたよ!)

『あ、こら、ホワ、待て、止まるな止まるな、あともうちょっと……あ~駄目だ、完全に意識がそっちに向いちゃったよ』



 しばらくして、何時もの恰好(騎手服)で彩音がやってきた。


 これには思わず、彼は練習を止めて彩音の下へ向かう。


 この騎手とて悪くはないのだが、やはり……彩音の方が良いなと思いながら駆け寄れば、嬉しそうに笑う彩音より首筋を撫でられた。



『なんだかすみません、調教の邪魔をする形になってしまって……』

『いやいや、構わないよ。やっぱり、ホワは柊さんじゃないと駄目みたいだ。指示に従ってはくれるけど、明らかにやる気が出ていないみたいで……』

『まあ……駄目じゃないの、ホワ。ちゃんと指示に従わないと……』

(──いや、そう言われても、どうにも噛み合わないというか……やっぱり、彩音さんが乗ってくれる方が俺も楽ですから)



 そう答えてやりたかったが、彼の口から出た言葉は、ヒヒン、ブフン、といった馬の声だけであった。


 当然ながら、それで意味が伝わるわけもない。


 苦笑する2人を横目に見やり、彼も内心では苦笑を零しながら……彩音に撫でられたまま、おとなしくしていた。



『しかし、ここまで目に見えて反応が顕著だと、万が一乗り替わりが起こった時が大変だな』

『……ですね』

『乗り替わる事はないだろうけど、体調やら何やらで、その日どうしても無理ってなった時が……しかし、この様子だとなあ……』

『幼少の頃から付きっきりで面倒を見てくれた人が、牧場の娘さんなので……もしかすると、女性じゃないと駄目なのかもしれません』

『あ~……そっか、ホワからしたら、そういう意味で女性が特別なのか……』



(いや、そういうわけじゃないけど……でも、彩音さんが嫌がらない限りは、彩音さんを乗せて走るのがスジってものだと俺は思うよ)




 そう言いたかったが、やはり、彼の言葉が届くわけもなく。


 ……というか、まさか馬が人語を理解しているだなんて夢にも思っていないから、本当に悪くはないのだけれども。



 でも……歯痒いなあ、と思う気持ちを、彼は抑えられなかった。



 ここで言葉が通じたならば、だ。


 如何に、今後のレースを有利に進められるだろうか。


 如何に、育ててくれた感謝を述べられただろうか。


 馬の身体なので、今更人間のように扱ってくれとは言わないが……まあ、考えたところで意味の無い事だ。



(とりあえず、ホープフル……ホープフルステークスとかいうやつを勝つ事を目標に、しばらくは頑張ろう)



 そう、判断した彼は……彩音が己の背中に乗ったのを確認してから、調教を再開させた。



 ──やっぱり、柊さんを乗せた方が、明らかに調子良いな。



 その呟きは、あっという間に離れた彼の耳に届く事はなく……先ほどとは打って変わって軽くなった彼の足取りを遠目に見やったスタッフは、苦笑を零さずにはいられなかった。



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