第72話 嫌悪感
ここは大阪ダンジョン、第15層ボス部屋。
翔が単独で
巨大な体に硬い
「うおおお!」
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「カケル! 次は左!」
<
「頭の上!」
<
「最後よ! 決めちゃって!」
<
──シャ……シャァァ……
【グランスネーク】は何も出来ず、起こしていた体の前部分から生命力を失ったように倒れていく。
翔はフィの指示通りに、大きく硬い鱗で出来た皮膚を<
異世界で一度戦っている魔物のため、翔も対策は完璧だ。
「お疲れさーん! 楽勝ね」
「さすがに疲れたけどな」
翔とフィは達成感からハイタッチを交わす。
ダンジョンに潜りっぱなしで詳細な時間は分からないが、今日の目標は達成できたようだ。
「じゃ、第16層の
「そうしよう! 帰って魔物料理食べるわよー!」
「げ、まじで食うのか? あれ」
「当たり前じゃない! 異世界でもあんな
(お前は腹減るとかいう概念がないだろ……)
思った事をそっと心の中にしまっておく翔だった。
「!」
第16層の扉を開けたところで、翔は
「おい、あれって」
「だよな」
「お前ら、声が大きいぞ」
(何かこそこそ話してるな。同年代、いや一つ二つくらい上かな? まあ良いや、今日は疲れたしさっさと帰ろう)
その人たちをスルーして
「まてよ」
「ん?」
パーティーの中でも少し小太りな男が翔に話しかけた。
「お前、国探の
「はい、そうですが」
「東西対抗戦には出るのか?」
「?」
翔にとってはまだ聞き馴染みのない言葉である。翔は首を傾げた。
「知らねえのか、じゃあまあ良いや」
(一体なんなんだ?)
「カケルー、もう行こうよ」
フィが早く帰ろうと翔の袖を掴んで引っ張るが、翔はもう少し話を聞く姿勢だ。
「それがどうかしたんですか?」
「いや別に知らねえなら良いよ。ただ、出るならあの人にボコされるなってだけだ」
「あの人?」
その時、
翔は
小太りの男は転移してきた者の姿を確認し、驚いた表情を見せる。
「す、
(だれだ? すめらぎ? ……って、よく見たら今朝ぶつかった人じゃん)
「誰だよお前、気安く俺の名前を呼ぶんじゃねえよ」
転移してきたのは
「この方だぞ、天野翔! お前はこの方にボコされるんだよ!」
「だから、気安く名前呼ぶなつってんだろ」
「ひっ!」
小太りの男は皇に詰められてびびっている。
(今呼ぶなって言われたばっかじゃん。
ため息混じりに小太りの男を哀れな目で見る翔。
「ったく、こいつのせいで面白くねえじゃねえか。なあ、天野翔」
話しかけてきた皇に翔は応える。
「えーと、すめらぎさん?」
「ああ、そうだよ。この冷める奴にネタばらしされちまった。けどまあいいわ。俺が
(麗さんが?)
翔は信じられず皇に言い返す。
「嘘をつかないでくださいよ」
「ほんとだよ。さっさと帰って本人に聞いてみりゃいいじゃねえか」
「……」
(嘘をついているようには見えない。本当なのか? それにしても……気に食わない野郎だ)
全身白銀の装備に所々に金色で刻まれた筋。効果や素材に関係なく自分を目立たせるために作られたような装備、そして何よりその態度に翔は嫌悪感を抱く。
「分かりました。では、もう行きますので」
「なんだよ、もう帰るのかよ。つまんねー野郎だ」
「……」
「あ、そうだ、清流麗に言っておいてくれね?」
翔は振り返らずとも転移の手を止める。
「俺にぶっ倒されるの待っとけってな」
翔は言い返すことなく、そのまま地上に転移した。
大阪ダンジョン街、魔物料理専門店「魔頓堀」。
「カケル食べないの? めちゃくちゃ美味しいわよ!」
魔物入りのたこ焼きにお好み焼き、その他諸々をこれでもかという程に貪るフィ。
翔からすればどこに入っていくのか不思議なぐらいだ。
「食べるよ」
「……元気ないわね。今日は目標達成したのだから良いじゃない。それとも最後に会った奴のこと?」
「そう、だな」
一日目の成果としては申し分ない。
だが、麗さんが負けているらしいという情報、皇聖斗の態度に心のモヤモヤが拭い切れない翔であった。
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