第59話 成長した五人の<ステータス>
「かーくんっ」
「お、
「考え事?」
「そうだな」
ダンジョン街いつものカフェ、いつもの個室テーブル席にて。
おれは先に一人で席に座り、<ステータス>を眺めながら考え事をしていた。
「まあ、いよいよ明日だもんね」
「今から緊張しても仕方がないんだけどな」
「へー、やっぱ
華歩に続いて入って来たのは
「そりゃあするよ。相手は現学校の頂点だからな」
「じゃあ私たちも戦略立ててあげよっか! <ステータス>でも見ながら!」
「夢里はただ単に見たいだけだろ」
「てへっ」
そう言いつつもおれは促されたままに<ステータス>を共有する。先日第20層まで一気に駆け抜けたわけだし、途中で各々レベルもいくつか上がっているはずだ。
あの時は速さ優先のため、レベルが上がっても一旦無視というルールの元進んでいた。成長したおれたちの<ステータス>をここで共有して整理しておくのも良いだろう。
<ステータス>
アビリティ:急所に攻撃が命中した時のダメージが上昇
レベル:20
HP :434/434
MP :45 /45
筋力 :117 (157)
敏捷力:68
耐久力:26
運 :116
魔力 :17
<ステータス>
アビリティ:『魔法』の消費MP軽減、威力増加、範囲拡大
レベル:21
HP :307/307
MP :377/377
筋力 :28
敏捷力:45
耐久力:43
運 :51
魔力 :156 (206)
<ステータス>
アビリティ:あらゆる武器種の潜在能力を引き出す。レベルアップ時全パラメータが上昇
レベル:18
HP :594/594
MP :154/154
筋力 :101
敏捷力:114
耐久力:89
運 :90
魔力 :107
「かーくん……」
「つよくない?」
二人がジト目でおれを見てくる。<ステータス>を見せれば毎回これだ。
「まあまあ。華歩は魔力とMP、夢里は筋力と運。二人とも必要パーツはおれより強いじゃないか」
「そうは言ってもさー」
フォローしても夢里はまだ不満そうだ。
それより……
「この()内の値はなんだ? 二人には付いてるのにおれのには無いぞ」
「あー、それはね──」
華歩が説明しようとした隙に別の声が割って入ってくる。
「“アビリティ補正”だよ」
「おわっ!」
「日常で“忍”を出すなよ。驚くだろ」
「はは。天野君もダンジョン外じゃただの鈍い人だね」
凪風が来たことでおれはテーブル席の奥へ移る。この個室は二つのテーブル席で一つの個室となっており、華歩と夢里の女子陣は隣のテーブル席だ。
「で、その“アビリティ補正”ってのはなんなんだ?」
「そうだね。“実数値”とでも言えば良いかな。実際にアビリティが働いた時の値さ」
なるほど。つまり、夢里は急所に攻撃を当てた時、華歩は『魔法』を使った時に()内の値になるってわけか。
「<ステータス>は段階ごとに拡張機能が追加されるんだよ。“アビリティ補正”はレベル20で追加される機能だね。レベル30は……なんだったかな」
「なんだ、悩み事か
トレーに入る限りの食べ物を積んで入って来たのは
「そうじゃないけど。とにかく君は悩みが無さそうで羨ましいよ」
「はっはっは、まあな!」
豪月と凪風はいつもの調子だ。この凸凹コンビがダンジョンではすごく頼りになるんだよな。
「ねえねえ、豪月くんと凪風くんの<ステータス>も見せてよ!」
隣のテーブル席から、夢里がこちらの席に向かって手をついて前かがみにお願いをしてくる。胸の装備がしっかりと隠れるもので良かったよ。
「たしかに、なんだかんだ僕のを見せた事は無かったね」
「そうだな。オレも覚えはない」
「じゃあ共有して良いか?」
「うん」
「おう」
おれの<ステータス>画面から二人に申請を行い、五人全員で共有する。おれもこの二人の<ステータス>を見るのは初めてだな。
<ステータス>
アビリティ:拳の攻撃範囲拡大、
レベル:20
HP :649/649
MP :9 /9
筋力 :134 (184)
敏捷力:45
耐久力:103
運 :11
魔力 :2
<ステータス>
アビリティ:敵が近くにいる時、自身の移動速度・攻撃速度・運パラメータが上昇
レベル:20
HP :372/372
MP :45 /45
筋力 :61
敏捷力:137 (167)
耐久力:30
運 :104 (134)
魔力 :13
「豪月は清々しいほどに全振りだな」
「はっはっは、力こそ全てだ。オレはこの拳で全てを砕く」
豪月は前に出した右手を強く握った。この拳には何度も助かったな。
もちろんオールラウンダーも良いが、ある意味豪月みたいな偏った<ステータス>も分かりやすくて良い。スタイルの選択幅は狭いが極めれば強い。
その一方で、
「凪風はやはり手数という意味で速さか」
「そうだね。筋力が低くても手数が多ければ、運によるクリティカルヒットの回数も多くなる。僕は気に入っているよ」
まさに“忍”といった感じの<ステータス>だな。
「へえ、
「そうだね。無理をして深い階層に行ったのだし、推奨レベルには到達していなかったと思う。経験値がおいしくて上がったのかも」
凪風が興味深そうに各々の<ステータス>を眺める。それは豪月も同じだ。今の豪月の目は頭が良い時の目だ。
「やっぱり豪月くんと凪風君も強いなー」
夢里が
そんな中、
「
「うん。豪月の言う通りだね」
「へっ?」
二人はこちらにくるっと顔を向け、さらに凪風の目は先程の女子陣と同じものになっている。
「
「いや、そのー……」
つい流れで二人にも公開してしまった。いや隠してたつもりもないんだけど。
「かーくん」
華歩がおれを呼び掛けた後、こちらを
まあこいつらなら良いか。事情も知らずに協力してくれたわけだし。話さないのはフェアじゃない。
「少し長くなるけど、話をして良いか?」
「オレは良いぞ、兄弟」
「ぜひ聞いてみたいね」
二人の返事を聞き、自分の中で話をまとめる。
今更この二人に話すことに
「“異世界転移”って言うんだ。それは──」
「天野君の強さには疑問を持ってたけど、そういうことだったか」
「オレも行ってみたいものだな。その異世界とやらに」
二人はおれの話に納得してくれたみたいだ。
「ふむ」
「どうしたんだ? 凪風」
考え込む様子を見せる凪風に問いかける。
「いや、ちょっとね。今の話が本当ならシンファさんやこのダンジョンという存在の事、いくつか気になる点はあるよね」
「! ……ああ、そうだ」
凪風はやはり鋭い。物事の一歩先を見ている感じだ。
おれも今同じ疑問にぶつかっている。
「けどまあ、今は考えようもないかな。それより、勇者様は
「それなんだよなー」
そういえばこの話が始まったのも、この“明日の事”がきっかけだった。
「心配するな翼。天野なら勝てる。それがたとえあの
「簡単に言ってくれるよ」
そうだ。明日はいよいよ約束をしていた“麗さんとの模擬戦”。
今のおれと比べるとまだまだ高い壁であることは明白。でも、それでもおれは戦いたい。
「出来る限りの事はやってみるよ」
大口は叩いていないが、おれは自分が勝てると信じてる。
明日が待ちきれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます