第26話 国立探索者学校

 「「反対された?」」


 ダンジョン街いつものカフェ、ダンジョンへと潜る前の談話の時間だ。

 おれは昨日母さんに「国立探索者学校に行くのは反対だ」と言われたことを、華歩かほ夢里ゆりに愚痴っぽく話していた。


「それで、その後かーくんは何も言わなかったの?」


「そりゃあ言ったよ」




────

「な、なんで! 母さんもダンジョンが好きじゃないか! 息子が国立探索者学校生だよ? 鼻が高いでしょ!?」


 いつもはおれが食べ終わるのを待ってくれる母さんはすっと立ち上がり、先に食器を片付け始めた。


「自分に聞いてみなさい。今日はこの話は終わりよ」


「こ、この分からず屋!」


「……」


 それ以上、母さんと話すことは無かった。

────




 おれは昨日を思い出すように二人に話す。


「ふーん、そっか」


「な、意味分かんないだろ?」


 華歩はうーんと少し悩んだ後、話し出す。


「わたしは小さい頃からおばさんをよく見てきたから分かるけど、少なくとも頭ごなしに否定する人ではないのは確かだよ」


「そうかあ?」


 正直、華歩の言っている事があまり理解できない。


「そうだよ。傍から見てる感じ、あんなに翔の事を考えている人はいないよ」


「じゃあなんでだよ……」


 華歩がただ母さんをかばっているだけだとは思っていない。むしろこれは彼女の本心なのだろう。


「二人はどうなの? 親にはなんて言ってるの?」


「私は普通に行きたいって言ったら、そうだと思ったよ、頑張れよって感じー。特に反対はされなかったよ」


 夢里が頬杖ほつきながら話す。


「わたしもずっと行きたいって言ってたから、今は素直に応援してくれてるかな」


「ちぇっ、いいなあ」


 おれが不満を漏らす中、夢里が何か思いついたような表情をする。


「じゃあさ、今日は気分を変えて行ってみない?」


「「どこに?」」


「国立探索者学校!」









「うわあ! 実際に見るとおっきいねえー」


「まじかよ、これが学校?」


「うん、まじまじ」


 その学校の大きさに度肝を抜かれる。これ、ネットか何かでは見覚えがあるけど、こんなにでかかったのかよ。

 

 3メートルほどの横に大きく広がっている門の向こうに見えるは、白を基調とした四階建ての巨大な校舎。


 門の内、敷地内には豊かな木々が生えていて校舎の奥行きは見えない。

超強化ガラスのような、おそらくダンジョンの産物であろう資材を存分に使った、まさに現代の最先端を象徴する建物だ。


 おれたちは夢里の提案を受け入れて三人でここ、“国立探索者学校”に来た。

 全国からダンジョンを志す猛者が集まる学校。中学生のみならず、メディア等の注目も集めるこの学校は、一年中オープン・ハイスクール形式で解放しているようだ。


かけるはそうだろうけど、華歩も初めてだったんだね」


「うん、実はそうなの。部活動もしてたし、一人で行こうとも思っても中々怖くて」


 まあ確かにね。


 周りを見れば、おれたちやこの学校の生徒だけじゃない。


 他にもこの学校を見に来た人から大人、めちゃくちゃガタイのいい人からちょっと刺激的な格好をしたお姉さんまで、本当に色んな人が出入りしている。あ、お姉さんは職員に連れていかれた。


「さ、行こっか。私は二回ほど来たことあるし案内するよ!」


「うん、よろしくね夢里ちゃん」

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