第16話 フィ
(これならきっと問題ないわ。かーくん、いや
「華歩ちゃん、【ホブゴブリン】が出たっていうのはこの辺かい?」
パーティーリーダーの男、この中では前衛の
「ええ、そうです。ここか……もう少し行ったあたりの洞窟のような場所だったはずです」
華歩は難解に入り組んだダンジョンを自身の頭の良さで思い出しながら伝える。
「【ゴブリン】の強化種、【ホブゴブリン】ねえ。第8層クラスだと言うし、にわかには信じ難い話なのだけど」
パーティーの女性が考え込むようにしながら呟く。
「嘘はついてません!」
「あら、ごめんなさい。信じてないわけじゃないのよ。私たちも【ホブゴブリン】を狩れるなら“おいしい”って思って来てるわけだから」
「
「どうゆう意味よ!」
「「「あははは!」」」
「ははは……」
(苦手だ)
華歩以外は初対面ではないではないという他の三人。それなりに年が離れていそうであることもあり、彼らの独特のノリに付いていけないのであった。
(でも、他の人に見つかる前に私はどうしても“レアアイテム”を手に入れなきゃ! そのためには……)
「華歩ちゃーん、ぼーっとしてないで行くよー」
「は、はい!」
★
「【ホブゴブリン】ねえ……」
「それがどうかした?」
「あ。いや、こんなとこに普通出るかなあって思って」
おれは昨日の【ホブゴブリン】のことを思い出していたわけだが、それが自然と口に出ていたらしい。
「なんでそんなこと知ってんの? 他はなーんにも知らないくせに」
「え! あーいや、ネット記事だよ、ネット記事!」
「……ふーん」
あぶねえ。おれはすぐボロが出てしまうから気をつけないと。
「ま、いいわ。答えは多分、“隠し部屋”ね」
「“隠し部屋”?」
なんだそれ、聞いたことがないぞ。
「それは知らないのね。いい? “隠し部屋”っていうのは文字通り隠された部屋のことで、強い魔物が出る代わりにレアアイテムを入手できるのよ。普通に進んでいても見当たらないわ。それこそ上位の“視覚系”<スキル>か、あとは
あ~。なるほど、わかったぞ。
「意外と役に立ってたんだな、
思わずぼそっと呟く。すると、
(意外とってなによ!)
「えっ?」
「翔? どうかした?」
「今、何か声がしたような」
「はあ? してないわよ」
でも確かに……
(したわよ!)
「ですよね! ……ってその声、もしかしてフィか?」
目を細めて「は?」みたいな顔をしている
(もう、やっと繋がったわ! あなたが思い出さないからこっちから全然アクション出来ないじゃない! どうなってるのよ!)
「知らないよ。というか喋れるなら出てきてくれると助かるんだけど」
(少しぐらい待ってなさいよ! えーと、ちょっとこのMP? っての借りるわね)
そう言うとぽん! と音を立てて目の前に手の平サイズの、羽を生やした黄緑の妖精が現れた。MPを借りる? というのはよく分からないが確かに少し元気をもっていかれたような(気がした)。
現れたのはフィだ。
彼女は異世界ではとても役に立った存在で、夢里の言う“隠し部屋”や
「もう! 今まで何してたのよ! こっちはあんたが──」
「うそ! 本物の
フィの言葉を遮るように夢里がフィに駆け寄って
「ちょ、ちょっと、誰よあんた! 気安く触るんじゃないわよ!」
「え~そんな喋り方なんだ~。ますますかわいいー」
夢里は早速フィに夢中だ。
「あのー、夢里? 一旦その辺でいいかな?」
「えー無理~」
夢里はフィを撫でるのをやめない。すでにメロメロだ。
「じゃあそのままでいいから」
「よくないわよ!」
フィのツッコミを無視しておれは続ける。
「フィ、早速で悪いんだがこの階層に“たからべや”はあるか?」
「“たからべや”? うーんちょっと待ちなさいよ……あったわ!」
少し目を閉じて“隠し部屋”の場所を感じ取ったようだ。やはりすごい。こんななりをしていても、頼れる仲間だったことには間違いない。
「後で全部説明するから今は案内してくれ。少し、嫌な予感がする」
「しょうがないわね! いくわよ!」
「翔?」
ひゅーっと自分の口で言いながら飛んでいくフィに案内されるがまま、おれと夢里は”隠し部屋”へと急ぎ気味に進んでいく。
悪い予感が当たらなければいいのだけど。
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