第11話 レベルアップ

 ≪レベルアップしました≫


「レベルアップ?」


 目の前の魔物を倒したと同時にそんなメッセージが目の前に現れる。


「おー、かけるレベルアップ? おめでと! それなら一旦戻る?」


「うん、そうしてくれると助かるかな」


 魔物からドロップしたアイテムを“ストレージ”に収納し、その場を後にする。もう少しで第2層だったけど、まあいいか。





「翔、レベルアップは初めて?」


 第1層の門を閉じ、魔物が襲ってくる心配のない場所でレベルアップについて教わる。


「そうだよ」


「はあ、やっぱりね。じゃあ、その豊富な<スキル>はどこから出てくるのよ、まったく」


 夢里ゆりはやれやれといった感じだが、あまり深くは踏み込んでこない。

 ダンジョン入門所のおじさんが言っていた、「<ステータス>をしつこく聞くのはマナー違反」とかを気にしているのだろうか。

 どちらにしろ、彼女とは良い距離感だ。一緒に行動していて心地が良い。


「じゃあまずは自分で確認してみて」


「うん」

 



<ステータス>

天野あまの かける


職業ジョブ “???”

アビリティ:???


<装備>

【スライムソード】【スライムシールド】【毛皮のマント】


レベル:2


HP :78/110  ↑10

MP :13 /13  ↑3

筋力 :5(+3)   ↑4

敏捷力:6       ↑5

耐久力:5(+6)   ↑4

運  :10      ↑9

魔力 :9       ↑8

 ・

 ・

 ・



 おお! すげー、パラメータめちゃくちゃ上がってる! これはハマるなあ。


「ふふ、嬉しそうな顔してるじゃない。さては三項目ぐらいパラメータ上がったな?」


「三項目ぐらい?」


 どうゆうことだ? 上昇したパラメータはこの右の「↑」で記された値で合ってるはず。見たところ全パラメータが上がってるけど。


「運にもよるけどね、パラメータ上昇に作用するのは主に職業ジョブなんだよ。たとえば私みたいな“銃系職業ジョブ”だと筋力と……運が上がりやすかったりするかな。敏捷力とかHPもたまに上昇するけど、耐久力は全然だ」


 えへへ、と夢里が笑う。こんなに良い子が職業ジョブさげすまれるとは。夢があればその分残酷なこともある、か。


 それにしても職業ジョブが作用する? おれって無職業ノージョブじゃないのか?


「夢里、無職業ノージョブの<ステータス>って見たことある?」


 夢里には悪いが、真に探りたいことを隠して質問をする。


「ううん、ないけど。もしかして翔って無職業ノージョブ? いや、あの強さでそれはないかあ」


 夢里が自分で聞いて自分で納得したように、斜め上を見上げながら呟く。


「でも」


「でも?」


「……君の<ステータス>は見てみたいかも」


「え、なんだって?」


 でも、の後がうまく聞き取れなかった。


「なんでもない! 今日はキリが良いしここまでにしよ。ありがとうね、付き合ってくれて!」


「うん、こちらこそありがとう。良い狩りが出来たよ。じゃあ、また今度!」


 バイバイと手を振り、互いに段々と離れていく雰囲気だったが、おれの言葉に「ん?」といぶかしげな表情をした夢里がずかずかと大股で戻ってくる。


「今度って、いつ?」


「えっ」


 いや、それは社交辞令といいますか、なんと言いますか。


「あなた、言ったわよね。パーティーを組むって」


「言ったような、言ってないような……ははは」


 昔からそうだ。おれはその場の勢いで口走ったことをあまり覚えていない。


「そう言ったからには明日からも付き合ってもらうわよ! し・ば・ら・く、ね」


 人差し指を向けて、夢里のぷくっと膨らませた顔が急接近してくる。

 まあ、おれとしても決して嫌じゃない。むしろ、彼女がいてくれて助かる。


「じゃあ改めて。明日からもよろしく、夢里」


「それなら良し。こちらこそよろしく」


 一時的な、仮のパーティーじゃない。

 おれにとっては初めて、この世界で本当の意味でのパーティーメンバーが出来た。

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