第10話 銃使い

 “銃使い”。それは“銃系職業ジョブ”と言われる職業ジョブの一種で、戦闘スタイル上、最後衛を務めることが多い。他にも銃を扱う職業ジョブは存在するが、“銃使い”は特にスナイパー式の銃で遠くから敵を狙い打ち、その重い一撃を急所に狙い当てることで魔物を仕留める職業ジョブだ。


 しかしそんな特性からか、安全なところから弾を打っているだけだ、乞食こじきだ、良いとこ取りだ、などど現状何かと言われてしまう職業ジョブでもある。


 戦士系や盾役タンク系といった、前衛でパーティーのために命を張る職業ジョブに比べれば危険が少ないのは事実であり、世間的にはあまり好かれていない職業ジョブであると言えるだろう。








「そっか。“銃使い”も大変なんだね」


「そうなんだよ。昨日組んだパーティーの成果がイマイチだったこともあって、私が怒られる羽目になったの」


「パーティーは最大五人までだっけ?」


「うん。経験値が分配されるのは五人まで。お前の代わりに違う職業ジョブを入れた方がましだとか、散々だったよ」


(異世界でもパーティーは五人までが良いとされていた。それ以上だと逆に統率が執ることが難しくなるからな)


 夢里ゆり自嘲じちょうするような表情が、かけるには少し心苦しく思える。


「今日あなたを誘ったのも、前に一度あなたの戦闘を見てたからよ。利用しているみたいでごめんなさい。私一人だと、どうしても狩りが出来ないから」


 翔のことを怪しんでいた夢里だったが、翔の態度から彼女の疑念は晴れ、彼と話す内につい本音を出してしまう。


(まあ、銃を扱う職業ジョブが接近されたら何も出来ないよな。第1層にいる【コモドオオカミ】ですらそれなりのスピードがあるわけだし)


「わかった! それならしばらくおれとパーティーを組まないか?」


 翔は思い切って夢里を誘う。呑気さと物事をあまり考えていないのは相変わらずだが、元勇者の翔は人思いなのだ。


「ありがとう。それなら他にも人を誘って……」


「いや、大丈夫」


「えっ?」


 翔はすくっと立ち上がり、夢里に右手を差し出した。


「おれ一人で十分だよ。心配ならとりあえずこの辺だけで狩ってみる?」









「これで! おわりっ!」


 翔の<二連撃>が決まり、【スライム】はバラバラになる。


「驚いたわ、あなた本当に強いのね」


「へへっ、まあね! 夢里の援護もタイミングばっちりだよ!」


 この辺だけといいつつ、あまりにすいすい進む二人のコンビは気が付けば第2層付近まできていた。ダンジョンの仕様上、同じ階層でも奥にいくほど魔物は少しずつ強くなるわけだが、二人はまだ余裕がある。


「まだ奥に進む?」


「ええ、いきましょう!」


 翔は女の子とパーティーを組めたことが嬉しく、夢里は嫌な顔一つしない翔に心を許し、楽しくなった二人は狩りを進める。


 そしてやがて、ピコンという音と共に翔の前にメッセージが流れる。


≪レベルアップしました≫

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